「フランス料理? 私にできるかしら?」とためらっている人のために、しばらくフランス料理の手ほどきです。フランス人ならだれでも毎日のように作っている家庭料理だから、できないわけはない。
フランスの台所に欠かせない道具の一つが、鋳鉄製の厚く重たいココット鍋。肉、野菜、ワインやブイヨンを加え、いったん沸騰させたら弱火にし、重たいふたをしたら、ときたま水分が減りすぎてないかをチェックしながら1時間なり1時間半なりことこと煮込んでいくだけ、という便利さ。選ぶときに大切なのは大きさで、チキン一羽が丸ごとおさまるようなものがほしい。老舗のLe Creuset製は、軽く200ユーロは超えるけれど、ハイパーなどでは、ほかの銘柄のものが100ユーロ前後で手に入る。
そのココットを使ってローストチキンを作ってみる。チキン一羽にまんべんなく塩、コショウしてココットに入れ、バター50グラムほどを薄く切ってチキンの上にのせる。ニンニクをいくつか皮ごと入れるのもいい。水をコップ1杯注ぎ、きちんとふたをして、180度で熱くなっているオーブンへ。
鶏の大きさ次第で45分から1時間たったらとり出し、ももが上になるようにし、ふたをせずにオーブンに戻す。10分から15分で軽く焼き色がついたらオーブンから出し、もう一つのももが上になるよにし、もう10分オーブンへ。最後に胸肉が上になるようにしてもう10分で、まんべんなくきれいな焼き色がついたローストチキンができ上がる。オーブンから出すときは、かなり重いので力持ちの手を借りたい。こつはひっくり返すたびに焼き汁をかけまわすこと。チキンを大きなまな板などに置き、ホイルで包んでおく。煮詰まっている焼き汁に熱湯少々を足し、ニンニクを加えたのなら押しつぶし、鍋の底についているうまみを溶け込ませ、こしてからソース入れにとる。ホイルをとってまな板ごと食卓に出して切り分け、もも肉か胸肉かなど、好みをきいてからサービスする。
ココットとオーブン併用で、中はふっくら皮はかりかりっ。そのうえ脂がほとんど飛ばないのでオーブンの掃除が楽!(真)
Cocotte
ココット鍋はチキン1羽が丸ごとおさまる大きさと書いたけれど、円形にしろ楕円形にしろ最低26センチのものほしい。取っ手が金属製だと熱くなるので、鍋の開閉には鍋つかみを使用する。ほとんどがホーローびきなので洗うのは簡単だが、しつこい汚れは、ホーローを傷めないようにしばらくお湯につけてからスポンジでぬぐう。ブッフ・ブルギニョン(牛肉の赤ワイン煮)、子牛のブランケット、チキンのトマトソース煮など、長時間の煮込み料理にはココット鍋が欠かせなくなるだろう。
Poulet rôti
フランスの多くの肉屋で、ロースターの中で20羽くらいのチキンが丸ごと焼かれていて、食欲をそそる匂いが通りに流れる。家庭でも日曜などのごちそうで、焼き色よく炒め上げられたジャガイモやマッシュポテトが添えられることになっている。これからがシーズンのグリーンピースのバター煮もおすすめ。スーパーではロースト用に糸で結わえられたものが並んでいるが、ぼくはいったんその糸を切って、腹の中に、タイムの枝を詰めたり、カレー粉を振り入れたりしてから、もう一度糸で足を結わえるようにしている。これで準備完了。
Purée de pommes de terre
自家製のマッシュポテトを作ってみよう。アミドンの量が多いビンチュ種bintjeなどのジャガイモを4人分で700グラム、皮をむいて切り分け、25分近く塩ゆで。パソワールにとって水気を切り、鍋に戻し、マッシャーpresse-puréeできめ細かくつぶし、バターを大さじ4杯、塩、コショウを振って混ぜ合わせる。バターを少なめにして生クリームを加えたり、柔らかめが好きなら牛乳少々を足してもいい。シャルロットcharlotte種のように煮くずれしにくいジャガイモをゆで上げ、フォークの背でつぶし、バター、塩、コショウを加えた、きめの粗いマッシュécrasé de pommes de terreが、ビストロなどに登場している。