
モーリス・ラヴェルは、150年前にスペイン国境近くのシブールという港町に生まれた。生誕150年ということで、ラジオやテレビで毎日のように彼の音楽が流れている。そこでオヴニーも、2回にわたってラヴェルの名曲を名演奏で聴いてみよう。
ラヴェルといえば、なにをおいてもクラシック音楽のヒット曲『ボレロ』(1928年作曲)*。スネアドラムによるリズムが終始繰り返され、それにのって二つの旋律が歌っていき、最後の劇的なクライマックスまでクレッシェンドがつづく、というシンプルな構成だけれど、決してあきないのは、管弦楽の魔術師、ラヴェルならではのオーケストレーションのみごとさ!ピエール・ブーレーズが指揮するベルリンフィルハーモニーの演奏では、木管や金管の名手たちによる各楽器の音色の精妙な変化の美しさ、そしてバレエ曲ならではの躍動感!
ラヴェルがオーケストラから引き出す豊かな色彩感は、合唱も入る『ダフニスとクロエ』(1912年作曲)でも十分に味わえる。ラヴェルがバレ・リュスのために作曲したバレエ曲で50分を超える大曲だが、全曲を聴くと、ぼくは、ラヴェルの極彩色の世界にちょっと疲れてしまうので、『ダフニスの優雅で軽やかな踊り 』、『夜明け』**,『全員の踊り』とか何曲かを選んで耳を傾けることにしている。
『夜明け』は音楽による叙景詩で、海の波の官能的なきらめき、徐々に空が明るくなり、陽がのぼり、光があふれる。この曲にも名演が多いけれど、ぼくの好みは、ピエール・モントゥー指揮ロンドン交響楽団の演奏だ。変に凝らず率直で、ニュアンスに富んでいて表情豊か。
次回はラヴェルのピアノ曲をとり上げてみよう。(真)

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