ヒゲで男らしさをアピールしたい。


 ハスニさんは初めてヒゲが生えた時から、ずっと口髭をたくわえているという。「在仏40年以上だけれど、やっぱり僕はアラブ人だからね。アラブ世界では口髭は超ノーマル!」 1カ月に1回、サンジェルマンの美容院でクロードさんに頭髪と口髭を整えてもらう。昔は髪とヒゲの手入れは自分でやっていた。だが、老眼のせいでうまく切れなくなってしまって以来、美容院の世話になっている。そのクロードさん の顔はツルンとしている。「ヒゲは、恥ずかしがり屋とか歯並びの悪い人が、その欠点を隠すために生やすもの。僕はそんな問題はないからね」 「僕にだってそんな問題はないさ。これは精悍に見せるため。男らしさをアピール、さ」とハスニさん。
 その昔、フランスのヒゲ流行は、国王のヒゲ・スタイルによって左右されることが多かったそうだ。16世紀、フランソワ1世は火傷の跡を隠すために髭を生やしていたが、そのせいかヒゲ熱が高まり、口髭の両端を上に向けたり、熱いコテをあててカールさせ、香油を塗ったり、とシャレる人もいた。そんな中、国王はヒゲ税を制定したり、弁護士にヒゲを禁止したりするのだが…。
 ナポレオン1世はエリート兵だけにしか口髭を許さなかったそうだが、まるでその時代の人のような口髭が自慢の保安機動隊員さんもいる。話を聞いてみたら、お手入れは、思いつくと手で下から上向きに撫でるのみ、だそう。
 1830年ごろになると、ヒゲを生やすのも自由になり、政治家、文学者、芸術家などに多く見られるようになる。超有名カフェのギャルソン、レイモンさん はヒゲ美男 (写真を参照)。彼にコーヒーを給仕してもらうと、その頃にタイム・スリップした気分になる。彼は毎朝ヒゲ用のポマードでセットして、夜寝る前に櫛でとかしているのだそうです。

(美)