黒沢清、2008年カンヌ〈ある視点〉部門・審査員賞受賞の『トウキョウソナタ』以来となる監督作『贖罪』は、日本のTV局 WOWOW で全5話の連続ドラマとして製作され、昨年放映された。同監督の根強いファンが多いフランスでは、ついにそれを劇場公開、それも前後編に分け、5月29日公開の前編には『Celles qui voulaient se souvenir 忘れたくなかった彼女たち』、6月5日公開の後半には『Celles qui voulaient oublier 忘れたかった彼女たち』と、それぞれ、なかなかふるった副題がつけらている。
小学生の少女が何者かに連れ去られ殺害される。その時一緒に遊んでいた四人の少女は、殺された娘の母親(小泉今日子)に呼び出され「一生かけて償え」と迫られる。という恐い導入部から彼女たち一人一人の15年後が描かれる…。
1)何かから逃れるように、なるたけ目立たないようにひっそりと暮らす紗英(蒼井優)の前に現れた男。紗英は護身のために彼と結婚するが…。
2)正義感の強い真紀(小池栄子)は小学校教師になった。あの日のようなことが繰り返されてはならない。そんな彼女の子供たちを守ろうとする行動が裏目に出て…。
3)あの日のトラウマをストレートに背負って実家に引きこもったままの晶子(安藤サクラ)。妻とその連れ子を伴って舞い戻って来た兄に対する疑惑が、彼女を錯乱に追い込む…。
4)由佳(池脇千鶴)は、助けを求めて交番に駆け込んだあの日以来、警官に強い思い入れがある。幼い頃から葛藤があった姉の結婚相手が警官であることを知った彼女は…。
5)意外なオチが待っている最終話は、呪いのように毎回こつ然と現れてドラマを誘因していた被害者の母の物語へとシフトする…。
原作もの、TVドラマという枠の中での黒沢清カラーが見もの!(吉)