ラブリュンヌ監督にインタビュー。

 雨が水たまりに落下し、波紋を広げゆく様を眺める、それは本作が喚起するイメージに近い。パリに降り注ぐささいな出来事。でも近付いてみると、個々の出来事は確実にその波紋を広げ、他人の意識や気分に微妙な変化をもたらしている。
たとえば “誰かが間違って購入したビニールシート” から、何かが始まる。これは都会の人間関係のモデルをスクリーンという顕微鏡に映し観察してみせた、科学的コメディーの野心的な試みだ。監督はジャンヌ・ラブリュンヌ。

Q:なぜ小さな出来事を通して作品を撮ろうと思ったのでしょう?
「私は、人間関係の中でいつ人が喜びや不安を感じ始めるのかに興味を持ちました。その微妙な変化がわかるよう大きな騒音は避け、あえて日常のささいなことに焦点を当てる必要があったのです」
Q :今までの重めの作風から一転、初のコメディー作品ですが… 。
「前作『Si je t’aime, prends garde a toi』の中で、予想外に観客の笑いを誘ったシーンがありました。そしてなぜ面白かったかを考えるうち、自分にもコメディが撮れるのでは、と思いました」
Q:役者の選び方について教えて下さい。
「今回はジャンヌ・バリバル、ナタリー・バイ、ダニエル・ダリュー、ジャン=ピエール・ダルサンなど、年令層や出演する映画のタイプが全く違う役者を集め、今までにない空気を模索しました。もともと私自身どこの派にも所属してない監督ですし」
Q:”本作は無声映画へのオマージュ” という意味を教えて下さい。
「無声映画は意志を伝えるのに大袈裟な表情や身ぶりが必要でした。一方本作はみんなおしゃべりだけど、実際は大したことを話していない。大切なのはむしろ態度そのもの。それは逆説的に無声映画に近付いていくように思えたからです」
 現在、監督は、日本の釣り人と仏人修道女の愛の彷徨を描く次回作『Le secret d’Hiroshi Amano』を準備中。(瑞)
(本作は11月15日公開)


● Dancer in the dark
 鬼才ラース・フォン・トライアーの新作はミュージカル仕立てで大いに話題になっている。ビョークとカトリーヌ・ドヌーヴの珍しい共演が見られる。同監督の前作 “Les idiots” と同じような薄暗く目の粗い映像が、1960年代に東欧からアメリカへ移民としてやってきたセルマや取り巻く友人たちをリアルに描くかと思えば、聞こえてくる様々な騒音が、突然音楽に変わり画面全体が踊りだす。
 おとぎ話によくありそうな少し意地悪で悲しい筋書きを、ビョークとトライアーというふたりの魔法使いが音楽、映像と分担しながら料理すると、一味違う不思議な世界ができあがる。数十台のカメラを使って撮られた数々のミュージカル場面はどれも傑作だが、何より気持ちいいのはビョークやドヌーヴなどの歌い手や踊り手の楽しそうで生き生きした呼吸が感じられるからに違いない。(海)
●Gangsters sex & karaoke
 ジャケ買いをする音楽ファンは数しれないが、タイトル決めする映画ファンを私は知らない。映画を観に行くには基本的に動機づけ(監督が○○、今話題etc)が必要らしく、だから映画ファンは貧乏臭いと言われる所以だ (私か)。もしタイトルだけなら、今月の一番人気と思われるのが本作。karaokeがタイトルに使われているだけでもジャポネ(ーズ)にとって、まずは気になるところ。
 舞台はロンドン。野心家の青年(J・L・ミレール)が、幼なじみ(J・ロウ)のコネを頼りにギャング一家にめでたく就職。だが間抜けさが災いし、ギャング間抗争を引き起こし、終いには仲間からも村八分にされるという悲喜劇だ。
 個人的には『リプリー』で美貌のボンボンぶりが眩しかったジュード君が、本作ではハート形 (富士額の逆) の若ハゲだけが眩しくてショック。主人公の運命よりも、ジュードのオデコの運命にハラハラさせられる一本といえよう。(瑞)