コンコルド・カット、ジタン・スタイル、ジャンヌ・ダルク。

 モード撮影やショーのヘア・スタイリストとして20年以上のキャリアを持つジュリアン・ディスさん。彼がミラノコレクションへ出発する前に、話を聞いた。
 彼の作る〈頭〉はいつも斬新、とにかく格好いい。いわゆるヘア・スタイリストだが、デザイナーのラガーフェルド氏が彼を形容するように「ヘッド・スタイリスト」と呼ぶのがふさわしい。石鹸水や砂糖水、時にはパウダーをまぶして独特の質感を与えた髪を「ナチュラルだけど、ちょっと汚れた感じ」のスタイルにしたり、針金、プラスチック板、銅板、アルミホイル、ガムテープ、アクリル絵の具などを使って〈塑像作品〉を生み出す。今でこそサランラップを頭に巻いたり、白い泥(本来顔のパック等に使う)を髪全体に塗っているのを見ても驚かないけれど、それは彼が新しいことに挑戦した後から、同じことをする人が出てくるからだ。でも真似は真似に過ぎず、どこかバランスが悪かったり、モデルに似合っていなくて素材の奇抜性だけが目についたりする。彼はボリューム、バランスの感覚、顔の個性を美しく見せる天才のようだ。
 だからよくイメージチェンジを依頼される。映画「ジャンヌ・ダルク」の主人公を演じたミラさんの髪をジャンヌ・カットにしてしまったのも彼だったし (ミラさんはあんなに短くなるとは思っていなかったとか)、今や国民的アイドルのレテシアさんも、ニュールックのジプシーになって、もうじきスクリーンに登場する。一時期、一世を風靡したモデルのリンダさんやナジャさんは、ジュリアンさんがショートにしてからグンとスター性が増した。ジュリアンさんがナジャさんのためにコンコルドでニューヨークへ行ってカットしたので「コンコルド・カット」(写真)と呼ばれる。
 いつも分厚いスケッチブックを鞄の中に入れていて、仕事の合間に絵を描いたり、ポラロイド写真、絵葉書、ブルターニュでの幼少時代の写真や、新聞の切り抜きなどをスクラップする。そんな絵日記がもう何十冊。「絵を描くのもヘアの仕事も同じ、考えるよりも先に手が勝手に仕事をしている感じ。時々、自分自身の仕事に驚くことがある…創造性を自由に発揮できる環境でないと仕事できない」
 彼は〈コムデギャルソン〉のデザイナー、川久保氏との長期間にわたるコラボレーションで、個性を発揮している。この号が出る頃、ちょうどパリでショーの仕事をしているはずだ。(美)


Photo : Patrick DEMARCHELIER