シャンピニョン・ド・パリと呼ばれるマッシュルームは、18世紀に入ると、パリ内外の石灰岩の地下採石場跡の洞窟で栽培されるようになる。一年を通して14°Cという安定した温度と、光が入らない暗い環境が栽培に適していたからだ。ピーク時にはパリ内外で400を超える採石場跡で栽培されていたが、オランダやポーランドの工業的な栽培による量産品との競争に敗れて、1990年代にほとんどの農家が撤退。現在も継続しているのは5軒の農家だけとなっている。
そのひとつ、モンテッソンにある、モイオリさんがマッシュルームを栽培している洞窟を訪ねてみた。この辺は、セーヌ川沿いの採石場carrière跡の多い地域で、野菜栽培で知られている。
住宅街を抜けると洞窟の入り口が見えてくる。その洞窟内、ニョキニョキと群れて頭を出している、白と、ロゼという褐色のシャンピニョンが圧巻!
●シャンピニョン・ド・パリの栽培
モイオリさんの伝統的な栽培法を紹介。
1)馬糞をもとにした厩肥(きゅうひ)と麦わらを混ぜ、殺菌処理をされたコンポストを土壌として使う。25度に暖房した湿気の多い部屋で、その土壌に菌をまき、2週間培養させる。
2)菌をまいた棚を別の部屋に移し、その上に、採石時の切りくずの石灰石の砂を敷く。砂は保水効果を持つとともに、シャンピニョンに伝統栽培ならではの風味をもたらす。洞窟内は常時14℃程度に保たれ、定期的に散水し、通気をよくしておく。
3)5週目から収穫が始まり、約5週間収穫できる。
これに対して工業的栽培法では、栽培期間短縮のため、温度を高めに設定し水量も多めだから、味も薄く、シャキッとした歯ごたえも少ない。
●伝統栽培のマッシュルームはどこで
パリ市内のスーパーや八百屋ではほとんど見つからないが、5軒の農家のうち3軒が直接販売をしている。うれしいことにシイタケshiitakeやマイタケpleuroteも買える。シイタケは、屋外栽培の日本のものとは違って、柔らかい風味が特徴だ。
-Champignonnière Les Carrières MOIOLI
販売時間:月〜金11h-12h30/13h30-15h、土11h-12h15/15h-16h、日11h-12h。
事前に電話連絡が必要(06.0906.2152)。Av. du Général de GaulleとRue Jean Macé
の交差点から洞窟への小道(通り名なし)を入る。78360 Montesson
RER A線Chatou-Croissyから徒歩約30分。タクシーもある。パリから車で行くなら、Nanterre、Rueil-Malmaison経由で約30分。
-Champignonnière Evecquemont Zinetti
毎金曜15h-18h。Rue des Carrières 78740 Evecquemont 01.3474.2246
サンラザール駅からMantes La Jolie行きに乗ってThun-le-Paradis駅下車、徒歩25分。山の中腹からのセーヌの眺望が美しい。
-Champignonnière de La Marianne Bruno Zamblera
販売は土曜午前中。3 rue Thérèse Léthias,
95540 Mery-sur-Oise 01.3464.8394
北駅からPersan Beaumont行きでMery-sur-Oise駅下車、徒歩10分。
●Le Coup de Feu
洞窟で栽培されるシャンピニョン・ド・パリを使った料理を出す店。シャンピニョンがあるかどうか事前に電話で確かめたい。
48 rue Léon Frot 11e 01.4379.2080
M° Charonne
文・写真:英隆行(はなふさたかゆき)