ベルヴィル街の改造が進んでいるが、それとともに、ランポノー通りにあった、パリ一おいしいチュニジア風ブリックを食べさせてくれた小さな店も、数年前に姿を消してしまった。卵とツナのブリックを頼むと、おじさんは、ぼこぼこになっているアルマイトの皿にブリックの皮をのせ、次から次へと具をのせ、卵を割リ入れ、二つに折って、油がたぎっている巨大な鍋にすべり落とす。その揚げる手際のよさ。熱々のブリックが、やはりぼこぼこのアルマイトの皿でレモンと一緒に出てくる。皮がぱりぱりと揚がったブリックに、レモンを搾りかけてかじりつくと、卵の黄身がとろりと流れ出そう。コリアンダーの香りとツナの相性も抜群だった。一度だけ一緒に食べに行ったことのある娘は、まだこの味を、店の雰囲気と共に覚えていてなつかしそうな顔をするので、このブリックを再現してみることにした。。
まず具の準備です。タマネギはみじんに切る。ツナはほぐす。コリアンダーの葉は細かく切る。レモンは四つに切り分ける。ここでフライパンにたっぷり油をとって中火にかける。油が少なめだとブリックがフライパンの底にくっつきやすい。腰の強い落花生油がおすすめだ。
油が熱くなったところで、大きめの皿にブリックの皮を置き、その皮の中央に、タマネギとツナを広げるようにのせ、軽く塩、コショウ。慣れないうちは具を少なめにする方が失敗しにくい。その上に卵を割って置いたらコリアンダーの葉を散らし、オムレツ形に二つに折り畳んで、滑らすようにしてフライパンに入れるだけだ。何もしなくても、あらあら、皮は自然にくっついてしまうので、ご心配なく。片面にきれいな焼き色がついたら、網じゃくしなどを使って引っくり返す。もう片面もきれいなキツネ色になったら、やはり網じゃくしを使って取り出し、クッキングペーパーの上にちょっと置いて油を切る。この一品、熱々が身上なので、揚がった順にレモンを搾りかけて食べていく方がいい。チュニジア人たちは豪快に手でつかんで食べてしまう。(真)
4人分:ブリックの皮4枚、卵4個、
油漬けツナの缶詰thon entier à l’huile150グラム、タマネギ1個、
レモン1個、コリアンダー半束、油500cc、塩、コショウ
●feuille de brick
ブリックの皮は、最近は大きめのスーパーで簡単に手に入るようになった。買う時は手にとってみてしなやかなものを選ぶことが大切だ。一枚一枚がくっつかないように硫酸紙が挟まっているので、その紙から静かにはがすこと。10枚入りで1€前後。
●ブリックの皮を使ったおつまみ2品
友だちを呼んだ時に、よく作るブリックの皮を使ったおつまみ2品を紹介。
最初は白身魚入り。まず円形のブリックの皮3枚を図①のごとく六つの三角形に切り分ける。楊枝9本を二つに切る。タラ科のcabillaudやmerlinなどの白身魚のおろし身300グラムを7センチの長さの棒状に切り分ける。18本必要です。図②のごとく魚を置いたら、その上にパプリカを散らしきっちりと巻き込み、楊枝で止める。18本用意ができたらフライパンに油をたっぷりとって揚げていく。色よく揚がったらクッキングペーパーにとって油気を切ってから、皿にやぐらのように盛り付け、レモンを添えて食卓へ。
もう一つはエビ入り。むきエビ300グラムを包丁でたたいてミンチ状にする。といっても少し身が形を残しているくらいがいい。ここへ万能ネギ2本を小口に切ったものと、おろしたショウガとニンニク少々を混ぜ入れる。軽く、塩、コショウ。万能ネギの変わりにバジリコの葉のみじん切りをたっぷり加えてもおいしい。ブリックの皮は、白身魚入り同様に切り分け、同様にエビのミンチを置いて、巻き込み、楊枝で指す。後はブリックの皮がキツネ色になるまで揚げるだけ。これもレモンを添えたい。
●huile d’arachide
落花生油huile d’arachideは、200度まで質が衰えない、という熱に強い油なので揚げものに向いている。そして丁寧にこして暗所で保存すれば数回使える。ただ最近は落花生(ピーナッツ)アレルギーの人が増えているので注意。そんな時は、ヒマワリ油huile de tournesolを使うといい。