BLOG : 小沢君江通信

Aller au charbon(辛い仕事)19

以前は、暖房はもっぱら薪を暖炉で燃やしていた。20世紀初頭から仏中央部オーヴェルニュ産の炭と薪が出回り、カフェの片隅に置かれて売られるようになった。オーヴェルニュ人の ことを〈bougnat〉とか〈charbougna〉と呼ぶようになり、炭鉱夫と同様に炭屋は顔面、手足とも真っ黒になる辛い稼業だ。ゾラの『ジェルミナル』の...

Peau de chagrin(あら皮)18

何の皮かというと、ロバの引き延ばした皮。バルザックの1931年作〈La peau de chagrin あら皮 - 欲望の哲学〉のあら筋は、貧しい若い青年が骨董屋で、不思議な力を持つと言われるロバの皮を買うと、金持ちになり、美しい女性を次々に征服していくのだが、その度にあら皮が小さくなっていき〈Ça rétrécit ...

オランド大統領の「勇気ある明晰な決定」。

リベラシオン紙(16-12-2)「ボクなしで」 オヴニー12月1日号の時事解説「右派公認候補は、やっぱりフィヨン元首相」の最後に「オランド大統領は何やってんの? 続投しないなら引退するつもり?」と書いてしまった。同日夜8時、フランス・テレビ2にオランド大統領が厳粛な顔をして、在任中の最大目的だった失業解決が果たせな...

次期大統領になるかもしれないフィヨン元首相。

 11月20、27日に行われた右派候補予備選の両投票日とも400万人以上の保守派投票者が駆けつけたのが一つの驚き。投票毎に2ユーロ払った彼らの6割以上は60代以上の裕福な定年者だ。第1回投票で、今まで政界でむしろあなどられてきたフィヨン元首相が44%で、サルコジ前大統領(3位20.8%)を押しのけ、左派・中道派...

A l’œil(タダで)17

行きつけのカフェでパトロンに「寄ってきな」と言われて、四方山(よもやま)話に花咲かせ、ワインでも一杯注がれれば、お勘定をなどと言えば水臭くなるので〈Il boit à l'œil〉結局タダ飲み。小さな映画館でもチケット売場のお姉さんが顔見知りだったりすると、目配せして〈Il va au ciné à l'œil 〉「...

C’est la fin des haricots(インゲンもなくなり最低な生活)16

インゲンは昔から庶民の日常野菜だった。18世紀の船旅の食糧といえば、最初に出るのが精肉と新鮮野菜、次に出てくるのが薫製食品、最後に残っているのはハムと缶詰のインゲン。前世紀(今もそうかも)の寄宿舎でもだいたい付け合わせには安くて体にもいいインゲン。生活が落ちるところまで落ち、缶詰のインゲンも手に入らなくなった時、元気も...

C’est nickel !(ニッケルのように清潔でピカピカ) 15

ロベール辞典の1918年版に初めて登場した金属名ニッケルは、流しの蛇口にも使われるようになった。鉄製に比べ、ピカピカで清潔感を与える。誰かの家に招かれ、〈C'est vraiment nickel chez lui〉(彼の家はピカピカで清潔!)と褒めたくなる。誰かに仕事を頼んだ時、完璧に達成された時には〈C'est n...

Vaches maigres(飢饉)14

どうして痩せた牛たち〈vaches maigres〉が飢饉を意味するかというと、古代エジプトのファラオンの夢想に由来するとか。旧約聖書の中に、ファラオンが午睡中にナイル河から7頭の肥えた牛が出てくるのを夢見たのだが、そのあとやせ細った7頭の牛が出てきて、肥えた7頭の牛をむさぼり食いつくしてしまった。そこでヨセフがファラ...

Monter au septième ciel(陶酔状態になる)13

旧約聖書に「神は7番目の天に召します」と書かれているように7は全ての頂点を意味する。男女間でも〈être au septième ciel〉〈atteindre le septième ciel〉といえば、「陶酔状態」に達すること。では芸術分野にどうして順序がつけられたのか、映画は〈septième art〉「第7...

ホームレス(SDF)排斥感情。

11 月5-6日、何者かが放火したSDF用住居。Le  Parisien(16-11-7)©Christine Henry パリのホームレスはだいたい歩道脇か、サン・マルタン河岸にテントを張って過ごすのだが、現在全国に約12万人、イル・ド・フランスに約9万2千人(2015年比、1万2千人増加)が夜間宿泊施設を利用し...