フランスでは、海岸もパリの公園も禁煙地区に。

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1989年世界保健機関が5月31日を「世界禁煙デー」と定めて30年。しかし喫煙は国民の30~40%にとって日常的に不可欠なものとなっている。働く女性の増加とともに女性喫煙者も増加。政府が喫煙は国民にとって有害と認め、フランスでのタバコ規制の取組みは1976年のヴェイユ法から始まり、1991年エヴァン法(タバコ広告の禁止など)に引き継がれた。さらに 2007年以後、旅客機内や公共の場(駅や交通機関、公共施設、職場など)も喫煙禁止となり、デクレによりレストラン・カフェは店内と喫煙が許されるテラス側を分ける決まりが一般化された。
保健省の統計によると、日常的喫煙者が、2016~17年に29.4%から26.4% に減ったことで、喫煙者が約100万人減ったといわれるが、定期的なタバコの値上げ(2019年3月に1箱8.2-8.6€)により、平均所得未満の喫煙者は39%→34%に、貧困層・失業者は55%→44%と、喫煙率は階級差を示している。政府は2020年には1箱を10€ に値上げする意向。従ってフランスよりタバコが安い隣国(ベルギーやスペイン)から買いだめしてくる市民が後を絶たない。

パリ市内禁煙地区の拡大。
パリでは、6月8日から緑地の10%に当たる市内52の公園が禁煙となった。砂浜が吸い殻の捨て場になっている海岸も喫煙禁止となった。パリ市内の環境保護のためと幼児や通行人からタバコを遠ざけるための禁煙キャンペーンの一環だ。公園は喫煙者がベンチに腰掛けて一服吸って一息つく場所ではなくなる。公園内で監視員に捕まると 38€の罰金。
長い間、パリ路上の犬のフンが観光客には一番目につくパリの悪評高い風物詩だったが、パリ市は路上から吸い殻をなくすことに力を入れ、歩道で吸い殻を捨てる現行犯を取り締まる監視員3200人を抱える。現行犯で捕まると、その場で罰金68€の即金払い、現金がない場合は、4-5日後に催促状が送られる。路上清掃人が集めるゴミの中で吸い殻は40%を占め、年間350トンにのぼるという。

タバコが引き起こすガン。
ガン医療について特筆すべきは、2003 年シラク大統領がガン関係の医療費を無料にしたこと。2人に1人は何かしらのガンに罹るといわれる今日、喫煙者の90%は肺ガンになるという数字が出ている。かなりの女性が乳ガンになるのだが、近年は肺ガンが乳ガンに追い付きつつあり、乳ガンより肺ガンによる死亡率の方が高くなっている。ヘビースモーカーのそばで暮らす人や働いている受動喫煙の非喫煙者も、肺ガンまたは心臓血管病にかかる可能性が20%増すという。妊娠中の女性の喫煙はいうまでもなく、早産、未熟児の出産だけでなく新生児の呼吸器官の障害など、アルコール飲料と共に極力控えるべき。

麻薬に代わる密造・密輸タバコの増加。
去る3月、憲兵隊がリヨン郊外ヴィラーバンヌのある民家の倉庫に隠されていた2.4トン(12万箱)におよぶ密輸入タバコを発見し、7人の密輸入容疑者が検挙された。これらは主にフェイスブックやインスタグラムなどで密売されていると見られ、タバコ全販売量の4~5%に当たる180億ユーロに相当する。
偽造マロボロのほとんどは、アルジェリアやウクライナで生産されているという。3月のタバコの値上げはいうまでもなく、度重なる値上げと電子タバコの普及により、タバコ販売量がこの2年で9%ほど低下したといわれるが、密造タバコの密輸入業者はウェブを利用して、例えばマルボロ赤を5€で密売する麻薬ディーラーまがいのタバコ密売網が、全国に350は存在すると見られる。各市のタバコ密売網は、ピザ配達のようにタバコを配達して回れるので、怪しまれることも少ない。タバコが高くなればなるほど、このように密売タバコの需要が増していくという矛盾との競争になるのでは。

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