マクロンは、やっぱり普通の政治家ではなかった。

シャルリ・エブド(16-9 -7)「右でも左でもないエマニュエル。キミはだれ?」*

シャルリ・エブド(16-9 -7)「右でも左でもないエマニュエル。キミはだれ?」*

前ブログで書いた、ブリジット・マクロン夫人が「彼より25歳年上で、彼の高校時代のフランス語の教師だった」という個所に驚いた読者もいたのでは。現在、彼女は63歳、彼は38歳。彼の両親は2人とも医者。流星のごとく現れ、可愛がってくれたオランド大統領に辞表を突き付けたマクロンの話題がこれからもメディアを騒がせそうなので、その前にちょっぴり彼らのプライベート生活を、L’OBS(16-9-1)のマクロン夫婦特集でのぞいてみよう。
ブリジットさんは、ノルマンディーはアミアンに近いトローニュという町のチョコレート老舗店の6人兄弟姉妹の末娘として生まれ、アミアン市のカトリック私立高校のフランス語の教師を務める。銀行員と結婚し3人の子供を持つ。エネルギッシュなブリジット先生は演劇クラブを盛り上げ、そこに溌剌とした美少年エマニュエルが参加する。彼女はボードレールやランボー、ボーマルシェ、なかでもモリエールの『ドン・ジュアン』を好み、フローベールの『感情教育』なども感受性の鋭い、若きエマニュエルにも読んで聞かせたのではないだろうか。エマニュエルの視線から逃れられなくなったブリジット先生も熱い恋が燃え上がる。高校の同僚教師から家族、親類、地元のカトリック社会、町の名士からひんしゅくどころか猛反対の竜巻が舞い上がる。常識では考えられないこの二人の恋物語の唯一の理解者は孫自慢の祖母。二人は10年間の孤軍奮闘の果て、2007年に結婚した。20代の彼はロスチャイルド銀行に勤務、そのあと財政調査官を務める。
2014年、36歳の一番若い閣僚、マクロン経済相が生まれる。大統領府副長官時代も経済相になってからも、ブリジットは秀吉の妻ねねの現代版といえる。マクロンの協力者選びから議会での答弁、弁舌にまで彼女の目が光る。しかし、経済相としての仕事だけでなく、ディナーやレセプション……と息つくひまもなく、2015年6月、「授業を準備する時間もない、生徒たちに顔向けもできない」とブリジット先生は疲労困憊。それでも彼女はモードのコレクションショーでは最前列に座り、俳優・歌手の大御所リーヌ・ルノーの誕生日には、彼女の若いときのアイドル、ジョニー・アリディ と一緒に招かれ、経済庁でのパーティーには名男優ファブリス・ルチーニを招き、ランボーやニーチェ、フローベールなどについての意見を交わすマクロン夫人の文学的造詣の深さにルチーニも恐れ入る。マクロン夫婦ファンは政界だけでなく、経済・実業界、芸能界までじつに幅が広いことがわかる。
夫婦と定期的に食事をする親しい友人は彼女のざっくばらんさや自発性をほめながら「彼女は型やぶりだ」という。彼女は2022年? 2027 年のファーストレディ? 「わたしにとっては今なの、そのあとだとわたしの容貌が問題になるから」とブリジット夫人。

*84年の名画『Emmanuelle』(シリビア・クリステル主演、フランシス・ルロワ監督)と同名だがエマニュエル・マクロンは男性なので最後のle がない。