同性愛者(ホモセクシャル)は古代から存在するが、ヨーロッパはローマ時代西暦390年には同性愛は法で禁じられ、違反者は死刑に処せられた。以後キリスト教により同性愛は禁じられ、20世紀までカトリック社会に忌み嫌われてきた。一方、イスラム諸国の中には、同性愛者に死刑を科す国がかなりある。ホモセクシャルという言葉が一般化したのは、性の解放が叫ばれた1970年以降のことだった。またレスビアンの語源は古代ギリシャ人女性詩人サッポーが滞在したレスボス島の名からとっていると言われている。
フランスでも70年代まで同性愛者は精神異常者として扱われてきた。アメリカ精神医学会は1973年に同性愛は精神異常からくるものではないとし、1993年、世界保健機関も同様に承認している。同時期にエイズ世代を経て同性愛者層に意識変革が生まれたのも確かだ。
フランスはオランド政権で同性婚が解禁となったが、保守派には相変わらず同性婚に反対する層が多い。だが社会は止まることなく文化・風俗面でも変化を見せている。家庭・子供を持つ男性が自分は同性愛者であることを家族や同僚に告白するケースもある。これをカミングアウトという。ドラノエ前パリ市長も市長時代にカミングアウトの表明をしている。逆に他人のホモセクシャル性向を暴露することはアウティングという。こうした急激な社会的変化の中で、二人のパパまたはママが所帯を持つ家庭も生まれている。女装したゲイが街を闊歩し、男同士が路上でキスしたり手を握リ合って歩く恋人同士のカップル姿も自然な時代になっている。
レスビアン・ゲイ・バイセクシャアル・トランスジェンダーの頭文字をとったLGBTが、彼らの尊厳を象徴するレインボーフラッグを掲げる運動となって世界中に広まっている。 6月はゲイプライドの季節として、パリでは6月29日のゲイプライド(コンコルド→レピュブリック)の他、全国の都市、そして世界中の大都会でLGBTパレードが虹色の旗を掲げで繰り広げられる。
ホモフォビアによる同性愛者排斥現象。
ホモフォビアのフォビアはギリシャ語の語尾〈phobos 〉から来ており、恐怖・嫌悪・拒絶を意味する。例えば、xénophobie : xéno異種+phobie嫌悪=外国人嫌い。同様にゲイフォビア、レスボフォビア、トランスフォビア、バイフォビア(両性愛者嫌悪)、イスラモフォビア(イスラムに対する嫌悪)と、フォビアの付く言葉は数かぎりない。
ホモフォビア現象は人種、宗教に関係なく異種への偏見・恐怖の裏返しとして、家族の拒否反応から級友、同僚、隣人の好奇の視線や路上の肉体的暴力、罵り、侮蔑、社会的差別となって同性愛者に向けられる。同性婚が認められて以来、同性愛者を狙う暴行やいやがらせが急増している。
5月14日にLGBT保護協会が公表した統計によると、ホモフォビア犯罪は2017年の1026件から2018年には1378件と、前年比34.3%の伸びを示している。被害者の75.4%は男性被害者で、レスビアン被害者は男性よりSOSホモフォビア 協会などに訴え出るのは少ないが+42%の増加を示している。また内務省によると、被害者の59%は35歳未満の男性だという。同性愛指向を自覚した青少年たちの証言サイトには、彼らの苦悩や悩みが語られている。
ボルドー市に虹色の横断歩道。
5月17 日の反ホモフォビア・デーにちなんで、ボルドー市は市立グラン・テアトル付近の交差点の横断歩道をLGBTのシンボルである虹色に塗装した(写真)。市が1600人の市民を対象にしたアンケートの結果は、12カ月の間に同性愛者の83%がホモフォビアの肉体的暴力や罵り、ハラスメントなどの被害を受けているという。被害者の70%はゲイやレズで、トランスジェンダーは53%。同市の平等担当助役は、この分野のアソシエーションと協力し合い、そして市の警察官たちも同性愛者たちへの見方や対処法も変えていかなければならないと、語っている。