4月3日に開始された国鉄組合員スト(「SNCFの改革なるか」: 3月5日付BLOG参照)は、6月28日まで3カ月間、5日ごとに2日間のストが繰り広げられている。毎日、通勤者たちは長距離バスや車の相乗りで3、4時間かけて職場にたどりつく涙ぐましい姿をテレビが毎日報道している。中にはこのときとばかりテレワークをする在宅勤務者も増えている。4月から5月にかけてフランス最良の季節、地方観光地のホテルやレストランは国鉄ストのため、10~15%の予約が取り消されている。貨物列車も同様、ストのあおりを被り産業界もかなりの余波を受けている。
乗車券が値上りしつつあると言われている国鉄料金だが、フランスでは100キロにつき平均7.8€だが、物価の高いデンマークは29.7€、スイスは24€とフランスより数倍も高い。国鉄が民営化されたら英国のように運賃が急上昇しかねないという不安感が国民感情を支配しているのも否めない。
今日550億ユーロの赤字を抱え、年間30億ユーロずつ赤字が増えている仏国鉄に、この30年間、どの政権もハレモノに触れずにきたが、90年代から始まっている欧州内交通機関の自由化期限を前にしてマクロン大統領には命とりになりかねない改革案なのである。国鉄問題だけでなく、エールフランス職員の6%賃上げ闘争や、ゴミ清掃人の賃上げ・定年早期化スト、大学入学選別制度(Parcoursup)への全国の大学に広がる学生の抗議運動など、大統領任期1年弱のマクロン大統領は多くの難題に直面する。
通勤者はどこまで国鉄ストに賛成するのか?
毎日400万人の通勤者が利用する地方急行列車(TER)の運転手の80〜95%がストに参加しているなかで、スト決行日は、地方急行列車や首都圏高速交通網RERなどは5 本に1本、TGVは8-10本に1本、ユーロスターも4分の3便がスト。ドイツ、スペイン、イタリア、スイス行きは全面的にスト。スト参加者にはスト決行日の給与はもちろん支払われないので、組合員は計36 日分の減給を覚悟してストを続行する。
四苦八苦して通勤している利用客の怒りが爆発するのではないかという危惧をよそに、IFOP(3/30-31日調査)の世論調査によると、51%は国鉄ストは妥当でないと答え、48%は改革案に賛成している。そして72%はフィリップ首相は最後まで改革案を堅持するだろうと予測し、27%は政府は挫折するだろうとみている。国民は、4組合からなる組合員と利用者、政府の三つ巴の持久戦を見守り、最終的に550億ユーロの赤字額が増税によって背負わせられるのではないかとの不安も抱える(マクロン大統領の狙いはそこにあるのかもしれないが)。
パリジャン紙(18-4-3)掲載のインタビューで国鉄労組CGTのブラン書記長は、「新社員には従来の特権資格を適用しないというが、同じ仕事をする者に同じ資格を与えないということはありえない」と根本的な矛盾点を指摘する。そしてスト日数を休暇日数から差し引いたり、スト組合員の代りになって働く幹部社員に1日150ユーロの特別手当を支給したりしているSNCF経営陣と政府の苦肉の策を警戒する。