ベナラ・スキャンダル

アレクサンドル・ベナラが真実を語る(Le Monde: 18-7-26)

 マクロン大統領のボディガード、アレクサンドル・ベナラ氏が5月1日、5区の コントルスカルプ広場でデモ(283人を職務質問し、うち109人を警察署に連行)に参加した男女カップル(29、30歳)を押さえつけている映像が公開され、彼がエリゼ宮から来たオブザーバーでありながら警備隊の腕章と防弾ヘルメットを被って同カップルに暴力を振った越権行為として7月18日付ルモンド紙が公表して以来、メディアから国民議会と上院の議員までが、火がついたように議会そっちのけで騒ぐ。国会の調査委員会でデルプエックパリ警視庁長官からコロン内務相、コレール大統領府事務総長、グリヴォ大統領府スポークスマン、ベナラ氏にビデオ映像を送った警官3人(懲戒免職に)まで事情聴取され、ベナラ・スキャンダルの責任は誰に? と喧々囂々(けんけんごうごう)と騒ぎ立てるなか、警視庁長官も内務相も事件翌日ベナラ氏を2週間停職処分にし、大統領にも報告済みと言明、各省官僚は責任のなすり合いの堂々めぐり(コロン内相などはベナラ氏など会ったことない、とうそぶく)、大統領府まで関係する政界疑惑に発展していく。肝心のマクロン大統領は事件直後「ベナラに裏切られ残念」と一言吐いただけで沈黙しつづける。大統領の沈黙は何故? とまたまたウワサと憶測が広がる。

ベナラ氏とマクロン大統領の関係
 オランド政権の警備分野で働いていたアレクサンドル・ベナラ氏(26歳)は、マクロン大統領選挙運動時期に信頼のおける警備要員としてスタッフの1人となり、マクロン大統領就任後は大統領のボディガードとして外遊や大統領夫妻のバカンスにも付き添うようになった。メディアの憶測によると、ベナラ氏には7月上旬以来、エリゼ宮付属の300平米のデュプレックスのアパルトマンが与えられ、改築費18万ユーロ、給与は月1万ユーロとエクスプレス誌などが騒ぎ立てる。大衆向き書き方では「マクロンとベナラはトモダチ同士?」と、マクロン大統領のニンジャ並みの私的ボディガードをめぐる好奇心をあおる記事が続出。

「責任は全部大統領にあります」
 7月24日、メディアの低俗な憶測記事に堪忍袋の緒が切れたマクロン大統領は与党議員と閣僚の前で、ベナラ・スキャンダルについて弁明した。「責任者を探しているのでしたら、あなた方の前にいます、迎えにきてください。大統領も調査委員会で事情聴取されるべきだという声も上がっていますが、大統領は議員にではなく、国民に対して責任を負います。……調査委員会は政府を監視するものであり、大統領を監視するものではありません……エリゼ宮付属の300平米(実際は60 平米)の アパルトマンにベナラ氏が住むことも、給与1万ユーロ云々(実際は6000€)、私とベナラ氏が仲のいいことなどメディアによる低俗なデッチ上げでしかありません。議員が司法官に成り代わって民衆裁判を繰り広げようとしています」と大衆の好奇心をあおるメディアにも批判的。マクロン大統領は全ての責任は大統領である彼にあると宣言しベナラ・スキャンダルを封じ込めたいところ。

ベナラ氏自身がルモンド紙で語る
 7月26日付ルモンド紙は2頁にわたるベナラ氏のインタビューを掲載している。彼が現在の地位に至った経緯から任務の内容、5月1日の3日前に警視庁のシモナン参謀長にデモ現場にオブザーバーとして立ち会うことを勧められ、警視庁職員から腕章や防弾ヘルメットを受け取ったこと。ベナラ氏は2 週間の停職処分後、エリゼ宮に復帰したが、停職前の大統領夫妻プライベートの付き添い任務は解かれ、大統領府だけの任務に格下げされたことなどを語った。
 インタビューの中で聞き捨てならないのは、「警察内部抗争の犠牲になったのでは?」という質問に、「(誰かが)私をおとしめ、抹殺しようとしたのです。つまり大統領に危害を与えようとしたのです。それは陰謀などではなく現実なのです。誰かが大統領をおとしめようとしたのは確かです。私には陰謀の対象にするほどの価値はないですが、事件後『やった! 彼がいなくなったから邪魔する者はいない』ともみ手をする輩がいないでもないのです。この話は、名前は言えませんが高位にいる人の口から聞いたことです」、最後に「私は大統領を裏切ったとは思いません。大きな過ちを犯したのです」とベナラ氏は語る。マクロン大統領もバカンスをのんびりと過ごしてはいられない、なぜなら国民議会では全野党がそろってベナラ・スキャンダルに対し内閣不信任案を提出しているからだ。

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