サルコジ元大統領をめぐる数々の疑惑のうち、3月20日ついに疑惑中の疑惑、故カダフィ大佐からの07年大統領選サルコジ選挙資金疑惑についての取調べで48時間拘束(1夜帰宅が許される)後、「受動的収賄」「選挙資金法違反」「リビア公金横領隠匿」などの疑いで被疑者に。サルコジ元大統領は07 〜12年の任期中は免責特権により、内相時代からの疑惑についても取り調べられなかったが、一市民となった今、種々の疑惑が雪崩式にのしかかる。翌日サルコジ被疑者はテレビですべての容疑に「物的証拠なし」と開き直る。
故カダフィ大佐からの選挙資金疑惑
カダフィ大佐からの07年選挙資金疑惑は12年5月、メディアパール(ネット報道)が暴露した。現ナマの運び人となった仏レバノン系事業家タキエディンは12年末に取り調べられた。メディアによると、06-07年トリポリから、当時のサルコジ内相配下のゲアン官房長官に350万ユーロずつ入った2つのカバンを手渡し、もう一つのカバンに1500万ユーロを詰めサルコジ内相に渡したと証言している。これについては両被疑者とも全面的に否定。
予審判事が関心を寄せるのは、カダフィ政権の元石油相ガネン氏(12年4月ダニューブ河で死体でみつかる)が、仏大統領決選前の07年4月29日付けでサルコジ資金650万ユーロ云々を細かく記した手帳がみつかる。同疑惑についてリビア側要人他、カダフィの息子や遺族は、リビア調査局にサルコジ候補に選挙資金を融通したとの証言をしている。
07年夏サルコジ大統領就任後、カダフィ大佐を国賓として招いたが、同大佐の反政府勢力弾圧の疑いを掲げ、国連の同意を得て英仏軍が11年3〜10月リビアを爆撃し大佐は隠れ家で何者かに殺された。以上、ジェームスボンド並みの政財界スパイ小説を読むようだ。
サルコジ傘下の腹心政治家たち
なかでもサルコジ下の「枢機卿」とも評されたゲアン元内相はサルコジ内相を引き継ぎ、警官への特別手当として数万ユーロを部下にばらまき、家政婦にも10年間ヤミ労働させた。現ナマに目がくらんだゲアン氏は息子に16万ユーロ、18年に71万5千ユーロのアパルトマンを購入、出所不明の50万ユーロはマレーシア人弁護士にフラマン絵画を売った金だというが。ゲアンは15年3月に公金横領罪で禁固1年に処された。
もう一人、頻繁にメディアに名が出るのはサルコジの忠臣ヴルト氏(フィヨン政権大臣、シャンティイ元市長)。07年大統領選前にサルコジ候補がよく出入りしていたロレアル故ベタンクール社長夫人宅に、選挙資金を取りに行っていたと見られる。15年2月ボルドー検察局は、ベタンクール疑惑で証拠不充分のためサルコジ元大統領を不起訴とし、裁判にかけられたヴルト被告を無罪放免とした。
大統領選にまつわるビグマリオン社による選挙運動費疑惑(偽請求書により800万ユーロを請求)。サルコジ元大統領は知らなかったの一点張り。16年2月、関係者13人が被疑者に。また大統領時代に親しい司法官に、モナコの司法機関に推薦すると約束した権力乱用容疑、エリゼ内での不法世論調査疑惑など、サルコジ元大統領はエリゼ宮にいながらも司法警察の捜査の成り行きを心配する時間のほうが多かったのでは、と国民は元大統領の負の時間を思い起こさずにはいられない。