国民戦線党の集団架空雇用疑惑の真相。

 3月9日深夜、フランス2 の疑惑調査番組(Complément d’enquête)が、マリーヌ・ルペンが率いる国民戦線党FNの欧州議会を利用した大規模な架空雇用疑惑の真相を報道した。2月以来、共和党大統領候補フィヨンの妻ペネロープと子供2人の架空雇用疑惑が国民の政治家に対する不信を深めているなかで、FNが欧州議会を利用した集団架空雇用疑惑はそれより規模が大きい。

 FNの国民議会議員は2人しかいないが、マリーヌ・ルペンは2004年から、父親ジャン=マリ・ルペンは2014年から欧州議員となっており、今日、FNは23人の議員を送り込んでいる。2月22日、マリーヌの親友カトリーヌ・グリゼと、マリーヌのボディガード、ティエリー・レジェとも常時パリにいることから、欧州不正撲滅局が2人を架空被雇用者とみなし報酬額34万ユーロをマリーヌの報酬から天引きすると決定した。また3 月30日付ル・モンド紙によると、その他のFN議員6人も架空雇用の秘書代をEU議会から支給させていた疑いで総額約110万ユーロが彼らの報酬から天引きされるという。

 国民議会と上院の議員秘書代は議員1人当たり上限月9千ユーロだが、EU議員は上限月2万3千ユーロ支給され、4人雇えば1人の給与は5750ユーロ(税込)となる。FN議員が23人いるから90人以上の秘書代として毎月約50万ユーロ以上支給されていることになる。父親ジャン=マリは御大なので欧州議会にはほとんど出席せず、彼の私邸で働く4人の高齢の秘書の給与もEU議会から出ているようだ。上記のマリーヌのボディガード、レジェも父親のボディガードだったという。架空雇用にあやかったFN協力者たちの取り調べの他に、2012年大統領選挙資金関係の取り調べで10人ほどのFN協力者も捜査のウェイティングリストに名を連ねている。

 驚くべき例として、20代と思われる若い元FN活動家が上記のTV番組で明かしたのは、2011年までの給与月4千ユーロの給料明細書などは党から出ず、2012年マリーヌがEU議員当選後、EU議会に行ったこともなく雇用契約書もないのに同議会から5500ユーロの給与が送金されていたという。ル・モンド紙(3/30)が報道したFN協力者人件費の「マフィア式」捻出法を、ショプラードEU議員・元FN顧問が証言する、「FNは政党ではなくイデオロギーの衣を着た企業にすぎない…県会議員秘書にも名目だけのEU議員秘書を兼任させ、EU議員秘書にマリーヌは必ず自分が選んだ秘書を1人加えさせる…このシステムと関係を持つとマフィアと同じく、ぬきさしならぬ罠にはまる。エリゼ宮を狙っているのはマフィアの一団であり、国民はそれを知っておくべきだ」。マリーヌ・ルペンはこの証言を「虚言であり、憎悪と復讐心にあふれている」としてショプラード氏を告訴した。

 マリーヌ・ルペンに予審判事から「背信・隠匿・公金横領」に関する事情聴取のため3月10日に出頭命令が出ていたが、「大統領選前に事情聴取とは!」と彼女は司法官らによる「政治的策謀」と批難し、議員の免責特権をタテに出頭命令に応えようとせず、「政治的被害者」を演じ、逆に支持者の同情と支持を深める。