フィヨン大統領候補:選挙運動中に被疑者に。

シャルリ・エブド(17-3-15)「がんばれ、フィヨン ! あと40日」

 1月25日付カナール・アンシェネ紙が暴露したフィヨン共和党候補の妻ペネロープと子供2人の架空雇用疑惑ペネロープゲート(1986 〜2013年彼女は83万ユーロ受給)暴露の報道にもめげず、右翼国民戦線党FNのマリーヌ・ルペンを破れるのは自分しかいないと、右派の「救世主」のようにフィヨンは選挙運動を続ける。彼が3月14日、経済検察局予審判事による「公金横領・隠匿、公的財産乱用隠匿・共犯、公職者の透明性義務を怠る」など、長い容疑内容の事情聴取に出頭した。1月の選挙演説で「被疑者になったら大統領選から身を引く」と宣言したが、予審判事の捜査を踏みにじるように「政治的暗殺」と司法権に刃向かってきた。戦後、大統領選候補が被疑者として取り調べられるのは初めてだ。

 メディアはフィヨン関係の報道を加速度的に展開する。側近によれば、フィヨンは2000ユーロ(25万円)のカシミアのセーターを着て、日曜版ジュルナル・デュ・ディマンシュ紙(17-3-12)によれば、2012年以来、オーダーメードの数着の背広の代金48500€のうち35500€は現金払い, 13000€は”友人”からのプレゼントだったという。そのうえ2013年、フィヨンは自分のコンサルティング会社2Fコンセイユ社の顧客である事業家ラシャリエール氏(2011 年フィヨン元首相は彼に最高位のレジオンドヌールを授与)から5万ユーロ(600万円)の政治献金を受けていながら税申告していない。議員は150€以上の献金を受けた場合は国会倫理委に届けねばならないのだ。この件で国会倫理委が調査するはずだ。

 一方、フィヨン夫妻と同様に架空雇用給与の受給嫌疑がかけられている娘マリ(34)は、弁護士研修時代の05〜06年に父親の秘書として4万6千ユーロを受け取り、そのうちの3万3千ユーロは両親に渡したという。弟シャルル(32) は07年サルコジの大統領選挙運動時代に6カ月父親の秘書として2万6千ユーロを受給。彼は現在アメリカで法学を学ぶ。合計5人の子供を次々に弁護士に育て上げようとするフィヨン家の家計は、サルト県の住居兼シャトーの維持とともに妻ペネロープが仕切ってきたのだろう。

 フィヨンが大統領に当選すれば、免責特権により任期5年間は取り調べが一時休止されるため、是が非でも大統領にならなくてはならないのだ。ル・モンド紙(17-3-16)によると、フィヨンは事情聴取日から10日以内に被疑者として扱われたことに対して控訴院予審部に上訴でき、6 カ月以内に予審判事に裁量力がないとして今回の捜査の無効性を訴えることもできる。だが4月23日の大統領選第1回投票日までにこれらの過程を踏むのは不可能だ。

 右翼FN(ルペン)、右派(フィヨン)、左派(アモン)、左派戦線(メランション)、無所属の中道左派 En marche!(マクロン)、その他のマイナーな候補者まで、市長を含む代議員500人の後援著名を受けて公認候補になった合計11人のうち誰が決選候補の二人になれるのか分らない「戦国時代」に似た今回の選挙運動中、フィヨンは保守派勢力を率いて押しの一手で大統領当選を目指している。しかしフィヨン政権成立後、フィヨン陣営で大臣ポストを狙って彼に付いてきた政治家たちの何人かはペネロープ・スキャンダルに幻滅し離反している。フィヨンは何度も捜査対象となったサルコジを批判し、昨年8月にも「被疑者になった人は大統領になる資格などない」と公言しており、その批判が自分にはねかえってきていることに国民の苦笑を買っている。地方遊説地では住民がなべの底を叩いて彼を批判するシーンも報道されている。