サッチャーに次ぐ英国女性首相:テリーザ・メイ新首相。

Theresa_May_UK_Home_Office_(cropped) 英国人は6月23日の国民投票(51.9 %)で欧州連合離脱を決め、キャメロン首相は国民に見放されて無念の辞職。後任は「Leave離脱」派の先頭に立って、見境もなく欧州連合の悪口を吐き続けた前ロンドン市長ボリス・ジョンソンではなかった。彼は次期首相の座を狙っているのだと誰もが思っていた。ところが次期首相を選ぶ段になって、ジョンソンと、また彼と共にブレクシット(離脱)派の中心となった英国独立党のファラージュ党首とが、首相選には出馬しないと発表。まるで国民は嘘のブレクシット節で踊らされていた感がなきにしもあらず。そして7月13日、首相官邸から出て来たのは、テリーザ・メイ前内相。保守党内で一番やり手の政治家といわれるメイ女史がキャメロンのあとを継いだ。

英国が欧州連合離脱後、将来がよく見えない手探りの情況にテコを入れるには、かつての「鉄の女」、サッチャーみたいな女性政治家が必要なのだろう。メイ首相はオックスフォード出の59歳、既婚だけど子供はいない。ガンコな「鉄の女」のイメージが消えないサッチャーの二の舞を踏みたくないメイ首相は、ひかえめで堅実、政治家につきまとう社交界を避けるタイプ。できればドイツのメルケル首相(子供を持たない)のようになりたいのでは。

ところがメイ首相内閣のなかで世間を驚かせたのは、なんと暴言マニアの悪名高き前ロンドン市長、ボリス・ジョンソンを外相に選んだことだ。7月15日付リベラシオン紙は、ボリス・ジョンソンが放ってきた一連の暴言をあげている。ブレクシット前に彼は「欧州連合はかつてのヒトラーの構想に近い」と発言。さらに「オバマ米大統領が大英帝国に反感を抱いているのは、祖先がケニア生まれだから」、07 年にヒラリー・クリントンに初めて会った時、「人工的なブロンド、ふくれ上がった唇、鋼のような青い眼は、精神病院のサディックな看護婦の眼」。06年には、パプアニューギニア人の祖先は「人食い人種だった」、プーチン大統領は「操作に長けた臆面なしの暴君」。このような暴言は週刊誌『デイリー・テレグラフ』に掲載された。彼は同雑誌から年間27万5千ポンド(約30万ユーロ)が支払われていたとか。これらの毒舌・暴言を吐かれ当人はそう簡単には忘れないだろう。

これから欧州連合でのブレクシットの後始末が2年間くらい続くというのに、口癖の悪いジョンソンを外相にするとは!……とメディアも欧米の政界も開いた口がふさがらない。メイ首相にしてみれば、彼女自身は欧州派なのだが、保守党内部のゴキゲンをとるためと、ジョンソンを外野に放っておくよりも手中におさめておいたほうが無難だと思ったのではなかろうか。こういう面をメディアは、イギリス風ユーモアと評している。

 

訂正(2017-01-09):記事中、「ブレクシット」とあるのは、正しくは「ブレグジット」です。

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