協議離婚の簡略化。

©La Croix

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今日、「離婚」は、婚姻者の半分、それも再婚者の離婚も入れれば1人が2回か3回再婚と離婚を繰り返していることになる。離婚の半数は協議離婚(12万件の離婚のうち協議離婚は5万6千件)で終っているので、家庭裁判所の過剰飽和状態は想像するまでもない。これまでは協議離婚でさえ、申請から成立するまでに4カ月から8カ月かかると言われている。離婚に携わる判事の負担を軽くするための協議離婚簡略化法が5月19日、国民議会で成立した。

新しい協議離婚法によると、協議離婚には、判事が介入しなくなる。従来は、離婚申請者両人の弁護士は共通の弁護士1人(約2000〜3000ユーロ)でもよかったのだが、新法案では離婚申請者はそれぞれが弁護士を雇う必要があり、各自1500〜3000ユーロの出費となる。したがって協議離婚のための弁護士の仕事が以前に増して増えると予想される。弁護士料を支払えない人には国が一部、または全額を負担してくれる(市役所に問い合わせる)。弁護士は自分の客に有利になるように弁護するわけで、高い弁護士の弁舌、説得力のある協議内容は離婚時の勝敗につながる。そこには判事はいないわけで、両者の言い分を調停する仲介者はいなくなる。弁護士各自が協議事項をまとめ、問題がなければ公証人の前で、不動産の売買同様に両人が署名し(公証人費用:50€)協議離婚が成立する。

しかし夫婦が協議離婚に至った背景や、離婚後の子どもの問題はほとんど考慮されず、協議離婚の時間を稼ぐために合理化を急ぐこの法案に、フェミニスト団体やSOSママ団体などは強く批判している。たとえば、家庭内暴力(DV)のトラウマに悩む妻は、協議離婚の条件を熟考する余裕もなく、1日でも早く暴力をふるう夫と別れることを急ぎ、夫の言いなりにならざるをえない情況に追い込まれるからだ。夫の妻に対する離婚後の補償給付(préstation compensatoire:離婚による妻への補償金)や、離婚後の子どもの親権、監護権、面接交渉権、養育費、居所指定権など、今までは判事が両者の言い分を訊いて調停してきたのだが、協議離婚後、様々な確執が生じた場合、民事裁判に提訴するほかない。

では子どもはどうなるのだろう。協議書作成前に、子どもの気持ちを訊いたうえで、といっても幼児の意思表示は不可能だろう。ママかパパの家に常時居住するのか、それとも1週間おきに、または週末だけ片親のアパートに泊まりに行くかなど、居所指定の問題などを互いに決めたうえで協議書を作成しなければならい。両親の離別を初めて経験する未成年の子どもにどちらかを選ばせるのは非常に難しいはずだ。そして今まで住んでいた家に両親のどちらが住みつづけるのか…。離婚は親にとっては人生のあいだの一つの曲がり角のように一過性の出来事かもしれないが、子どもにとっては生涯に傷痕を残すこともある。協議離婚は子どものいない夫婦や子どもが大きくなってからの夫婦に向いていると言えよう。

パックス(PACS : 連帯市民協約)は、解消する(dissolution)ときも協約時と同様に、両人が小審裁判所の書記または公証人の前で申請書に署名すればすむことだが、結婚には社会的結びつきが伴う。とくに若い女性のなかにはパックスよりも結婚を望む人が多いのは、日本でのように市役所で本人の代わりに代理人でも印鑑を押すだけで離婚できるのとは違い、やはり夫婦、親としての社会的ステイタスが与えられるからなのだろう。一方、パックスは持続的共同生活を営むうえで税制や社会保障などに関し、どこまでもプラグマティックな関係と捉えられているようだ。

*2014年(INSSE国立統計局):結婚件数 241,292(そのうち同性婚10,522)。 PACS 173,728(同性同士 16,337)。

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