3月に全国で「労働法改正案撤回」のデモが何度もくり返され、3月31日の全国デモを引き継ぐ集会かと思いきや、昨年の多発テロの思い出が集中するレピュブリック広場で「ニュイ・ドゥブー」集会が4月9日から毎晩続いている。仕掛人は、15人ほどの左翼活動家や経済研究家、NGOボランティアたち。「ニュイ・ドゥブー」は数日のうちに、リヨン、グルノーブル、ナント、ストラスブール、モンペリエ…と65の都市に飛び火し各都市の広場に数百人が集合し、誰もが何でも演説できる夜なべの集会が開かれている。
レピュブリック広場にはすでに4月上旬からまだ明るい夕べを満喫する人々が集まっていた。誰かが大統領が掲げた二重国籍者テロ犯の仏国籍剥奪案(引き下げられたが)への反対のうっ憤を叫べば、大学生の貧困化や大卒の失業、職に就けても短期契約の不安定な生活、高校生たちの将来の不安、資本家と政府のまあまあ主義的関係、大企業のリストラ解雇…、国民の不満をあげたらきりがない。そんなとき、4月19日、オランド大統領がテレビで明確な問題を抱える市民代表(Nuit debout参加者の1人も参加)との対話討論会が開かれたが、大統領は種々の問題に答えるがイマイチ説得力に欠ける。ますますニュイ・ドゥブー参加者たちの不満と怒りが広場にあふれる。大統領は若者たちが広場で不満を吐き出すことを面白がっているよう。ル・パリジャン紙(16-4-16)発表の来年の大統領選挙投票予想率によると第1回投票は右翼FN のマリーヌ・ルペン31%、サルコジ前大統領20%、オランド15%と、現大統領は絶対に決選投票にも進めないことが分っている。オランドは人気率でも最下位なのだから。
ニュイ・ドゥブー参加者たちは、右も左もFN(ルペン)も次期政権をとっても社会の不平等と30年来の失業は存在し続けることを知っている。彼らの叫び「希望を再び!」「国をつくりなおす」「市民の横の民主主義を」と政党不信を強める。14年スペインのポデモス党(私はできる)、15年ギリシャのシリザの勝利へと導いた庶民の力をフランスにもつくれるか、つくれたらそれをどう導いていくか、カリスマ的人物不在の烏合の衆に終ってしまうのではと不安顔も。プラトンはアテネのアゴラでの「直接民主主義」を「衆愚政治」に喩えていた。