フランスでの「いじめ」(後)。

@Thomas Samson(2014年秋)

@Thomas Samson(2014年秋)

いじめについて、精神分析医は、加害者はいじめに対し良心の呵責も罪悪感もなく被害者をどこまでも破壊しようとする欲求は、一種の倒錯的パラノイア的でもあり、優越感と傲慢さに満ち、他人を侮蔑し、妥協を許さない強引さを示すという。それには部分的に家庭環境が反映するとみられる。一方、集団的いじめに加わる級友たちは、依存的で自信のない生徒が多く、自分もいじめの対象にならないための群衆心理に甘んじるという。

親や教員、警察は、いじめを思春期のいたずらくらいにみなしがちだったが、いじめによる被害(後年トラウマになる場合もある)を無視できなくなった教育省は、2011年5月2-3日に、いじめの予防全国会議を開き、法的に被害者を認め、教師たちのいじめの感知(放置した場合、責任が問われる)と予防、いじめの目撃者の証言、被害者とその家族の支援などを呼びかけた。内務省と教育省は、いじめの場面をビデオクリップでも流し、被害者には無料の電話相談窓口(3020)を設けている。匿名でカウンセラーと話せ、どうすれば良いか説明してもらえる。

刑法の中で、いじめは校内外に関係なく加害者には拘禁+罰金刑が科せられる。例えば、重度の暴力を伴ういじめには、被害者が15歳未満なら懲役7年、罰金10万ユーロ(15歳以上なら5年、罰金7万5千ユーロ)、自殺を挑発するような言動は、被害者が15 歳未満の場合、拘禁1年半(15歳以上なら2年半)、罰金はどちらも7500€ 。加害者が成人なら拘禁期間も罰金も2倍に。そして13〜18歳の加害者は更生施設に送致される。

また被害者は青少年時代に受けたいじめに対し、38歳まで提訴でき、被害者の親は、加害者の親に損害賠償金を請求できる。

いじめは、社内でのモラハラやセクハラのように、密室で暴君と彼に従う同僚たちの沈黙と追従が弱い者を孤立させ、被害者を辞職にまで追い込むための侮辱的儀式とも言える。小中学生のいじめは親や教師の介入と、教室内での生徒たちとの話し合いによって思春期・青春期の人間形成の踏み台にすることができるかどうかだろう。教育省は、”Non au Harcèlement”の日として11月5日を〈いじめ予防デー〉とした。