マクロン政権はあと3年半持ちこたえられるか。

「マクロンを心理分析」(L’OBS : 18-10-11)

8月下旬ニコラ・ユロ環境移行相の辞任に続き10月2日、政府No.2のコロン内相も辞任と、マクロン外遊中にマクロン政権に異変が起こり、日に4時間寝ているかどうかのマクロン大統領は、リヨン市長の座に戻るコロン内相の後任者を選考するひまもなくフィリップ首相に内相を兼任させるというきわどい穴埋め人事を強行。

 フィリップ首相も辞めるのではないかという噂が流れる中、10月16日、小規模の内閣改造を発表。コロン前内相の後任にマクロン大統領の忠臣中の忠臣クリストフ・カスタネール(52)を任命。カスタネール氏は与党(共和国前進)党首兼議会関係相。彼の父親は軍人、エクサンプロヴァンス大学の法学部で刑罰・犯罪学を専攻、内相になることが彼の夢だったというから適材適所の任命といえる。

八方破りのエマニュエル・マクロンは何者?
 大統領就任1年半でマクロンのやり方(マクロニズム)への批判が高まる中、内相と環境相2人が次々に辞任するとは! マクロン自身に問題? と国民は疑心暗鬼の不安をつのらせる。ハンサムで目の青い優等生マクロンは伝統的な町アミアンの高校生15歳のとき、フランス語と演劇の教師ブリジットさん(当時39歳、既婚、子持ち)に恋をし、両親、世間の反対に屈せず10年かけて彼女と結婚した。中でも祖母にでき愛され、優等生でありつづけるエマニュエルには、常に自分が頂点に立つことを目指すナルシスト的体質があるのは明らか。

 週刊誌 L’OBS(18-10-11)は「マクロンを心理分析」と題し、6人のスペシャリストにマクロンの言動を分析させている。ある分析家は「彼は不透明、ミステリアス。彼は何もないところから勝利した。国民は無から出たこのジョーカーに賭け、ギリシア悲劇でいうデウス・エクス・マキナ(紛糾した事態に思いがけない解決)として国民を魅了した。また「優越心の強かったアルキピアデス(プラトンの弟子)的側面をもち、勝利を得た後、何に向かっているのか分らない」と分析する者も。既成政党がほとんど崩壊した後、「ボナパルトやドゴールのようにその空白を埋めようとしても彼の土台のないカリスマ的権威はあまりにも不安定」。「彼は愛されなくなるのを怖れ、無条件に彼をでき愛した祖母のために優等生になり、少年期のこうした家族環境が自己中心的性格を助長している」とある分析家は見る。マクロンを評する言葉「尊大な、傲慢Arrogant」という形容詞がひんぱんに使われるが、「誰よりも明晰、秀逸であるから大統領になったという過信は、一つのカテゴリーの国民を代表しているとはいえない」。一般的に政治家とは、あるイデオロギーや思想のために前進するグループや党の頂点に立って統率して初めて改革を押し進められるのだが、マクロンの左派・右派も包含するリベラルな姿勢を市民はどう捉えていいのか迷う。「金持ちの大統領」というイメージをくつがえすために、アンチーユ諸島では黒肌の元服役者の手を握ったりしているが…。

マクロン大統領のイメージ。
 当選した晩、ルーヴルのピラミッド前を荘厳な表情をもって1人で前進したマクロンの姿は孤独な大統領のイメージを刻んだものだ。政界を泳いで来た政治家たちに囲まれず、彼の指針はブリジット夫人のみ。24歳上の母親の年齢に相当するブリジット夫人が、孤独なマクロンの唯一の指針として彼を支えているよう。それだけに「永遠の少年」のイメージがついてまわる。と同時にマクロンはジュピター(人間界の秩序をつかさどるゼウス)的威圧を持って政治を遂行すると評されたが、政権の閣僚や大臣、与党内の統一も一筋縄ではいかない困難に直面している。

 メディアがサルコジ大統領を華やかなブルジョワ指向を意味する「ブリンブリン」大統領とカリカチュア化し、「普通の大統領」になることを目指したオランド大統領をサルコジ夫人などは「ペンギン」と評し、エマニュエル・マクロンをピーター・パンになぞらえる分析家も。彼は若さとインテリジェンスをもって、党派を超越し旧政界をくつがえす若い政治家として迎えられたが、あと3年半続投するための新しい息吹を必要としている。