7月14日の軍隊パレードにトランプ大統領を招待
マクロン大統領がこともあろうに欧州では悪名高いトランプ大統領夫妻を7月14日の軍隊パレードに国賓として招待することに仏国民は賛否両論。でもさすがマクロン!と感心する人もいる。当選したとき、トランプ大統領は「Make our America great again!」と叫んだのは有名だ。温暖化対策のパリ協定から離脱すると宣言したトランプ大統領にマクロンは「Make our planet great again!」と言い返したのだ。
自国の産業が栄えるなら地球がどうなっても構わないトランプなのだ。ドイツのメルケル首相とは握手しようともせず、エリザベス女王も彼を歓待する気にはならないし…。トランプはマクロンの正しい英語に感心しながらも、39歳の若造大統領くらいに思っているのでは? 世界で孤立しているトランプ大統領と親しい友人のように肩を叩き合っているマクロン大統領の真意を米メディアも疑ったのでは? マクロンはトランプを手なずけておけば、トランプと欧州連合の仲介役になれるのだ。すごく感情的になりやすいトランプにパリ協定の重要性を分からせるようにするには、狂犬を手なずけるように優しい言葉と時間が必要なのだ。13日夜はエッフェル塔のレストラン「ジュール•ヴェルヌ」にトランプ夫妻を招き、二人にとって生涯忘れられないパリの夕べを演出したのだ。
トランプ大統領を7月14日パリに招いた理由
マクロン大統領は20世紀の歴史をよく知っている。ちょうど百年前の1917年、第1次大戦時、仏英軍がドイツ軍に対して苦戦しているとき、米軍が参戦してくれたのだ。シャンゼリゼのパレードに第1次大戦のときに米兵が着ていた軍服を着た米兵5人他200人がアメリカの国旗を掲げて行進し、トランプも喜んだはずだ。2時間ほど行進が続いたあと、軍楽隊がアメリカでも人気のある仏エレクトロ•デュオ、ダフト•パンクの曲を演奏し、マクロンは笑顔を絶やさない。そのあと、巨大な米国旗と仏国旗が観覧席の前に併置され、最初に軍楽隊がアメリカの国歌を、次にフランスの国歌を演奏し、誰もがじーんとくる。
マクロンが2017年軍隊パレードをいかに歴史に残すか
普通軍隊パレードのあとは、大統領がエリゼ宮で2人のジャーナリストの質問に答え、それが全国に実況中継されるのだが、マクロンはこの番組を廃止し、その代わりに観覧席の前に立ち、第1次、第2次大戦、今日の対テロ戦争までアメリカがフランスに手を貸してきたことに深謝し、両国の深い友情は永遠に続くことを強調した。またシャンゼリゼを行進した数千人の陸•海•空軍、憲兵、警官、消防士…彼らがフランス人の自由と平等、治安を守るために戦っている無私の忠誠心、そして戦死した兵士の遺族や、ちょうど1年前ニースのテロで亡くなった86人の遺族、負傷者数百人は国家の援助を得られる被後見人(pupilles)にすると表明した。行進終了後、マクロン大統領とブリジット夫人が観衆の中に入っていき、遺族のひとりの女性が涙を流しながらマクロンを抱擁し、ほおずりをしたりするなど、オバマ大統領が持った市民との横のつながりと政治家•軍人たちとの縦の関係をうまく織りなしている。
1年前のニース•テロ被害者の哀悼式典
マクロン大統領はブリジット夫人とニースに向かい、昨年7月14日ニースの花火大会中、トラックの暴走により86人が死亡、約450人が負傷した大規模なテロ事件の被害者の哀悼式典が行われた。遺族•友人•ニース住民は被害者の名を記した浜辺の小石86個でハート形を作り、そして死者の名前と「自由•平等•友愛」と書かれた 86枚のパネルを地面に敷き詰めた。最後に86個の白い風船が夜空に放たれた。遺族•負傷者のテロのトラウマとの闘いがこれからも続く。
マクロンは21世紀の「ジュピター」?
最近メディアがマクロンを「ジュピター」とか「ジピテリアン」と呼ぶ。ローマの最高神ジュピターはギリシャ神話のゼウスに当たり、気象現象を司る神だという。大統領当選15日後の5月22日、訪仏中のプーチン大統領をヴェルサイユ宮殿に招いたことを批判する向きもあったが、300年前の1717年(ルイ15世の治世)ロシア大帝ピョートル1世がヴェルサイユ宮殿を訪れたのを記念してプーチン大統領を招待したのだろう。トランプ大統領には100年前の史実を思い起こさせ、マクロンを若輩大統領くらいにしか思ってないであろうプーチン大統領には、太陽王の後光を借りてプーチンを圧倒させたかったのだろう。「ジュピター」と形容されるマクロンが、欧州連合と米国、ロシア三者間の関係を取り持ち、西洋文化を敵と見なすテロリストとの戦いに、軍事•外交以上に世界に通じる哲学の力を発揮して欲しい。