マクロンの政党が過半数を得たけれど…。

有権者は投票よりも海水浴に行く
 6月18日の総選挙決選の棄権率が57%!(第1回投票51.2%)有権者の半数以上がソッポを向いたのは第5共和政でかつてなかった。昨年11月以来、6カ月間に右左派の予備選挙を含め8回の選挙に振り回され、候補者たちの演説やテレビ報道に市民が飽き飽きし、真夏の熱さの6月11日と18日、投票に行かず海水浴を選んだ家族が多かったのは、選挙はもうたくさんという気持ちだったよう。

多種多様なマクロン派議員
 1年前には存在してなかった、マクロン大統領が創立した共和国前進党(LREM)が決選で308 310席、連合した中道派Modemと合わせて352議席! でも予想された議席数400〜450(全議席577の3/4)より少ない。悠々と過半数を占めたとしても有権者の57 %が棄権したことを忘れてはならない。立候補者は教職員、自由業者、企業主、顧問、農業従事者、医療関係者、地方議員、議員秘書など幅広く、議会構造や規定を知らない当選者が多いが、マクロンが力説する政界改造・交替劇に参加する。彼らは軒並みに共和党(229 →112)と社会党諸派(314→45)を破り、オランド政権の前保健相(トゥレンヌ)や前労働相(エルコモリ)、前教育相(ベルカセム)などが落選。今まで左右の既成政党に投票してきた有権者が、一部はマクロン大統領の明晰さと実行力に感心し、39歳の大統領の独創的政治革命の一歩を踏ませてみようという寛容さがあったのでは。

国民議会新構成党(FI:服従しないフランス、PC:共産党、PS:社会党、PRG-DVG: 左派急進党-左派諸党、REM-MoDem:共和国前進党-民主運動党、LR:共和党、UDI-DVD: 独立民主連合-右派諸党、FN:国民戦線党、Divers:無所属)

これから伸びそうなメランション勢力
 マクロン政権に一党独裁を許してはならないと叫んだのは「服従しないフランス」を率いるメランションだ。マルセイユで出馬しメヌーチ社会党候補を破り当選、同党の新議員は17人に。6カ月前は共産党と共闘する左派戦線リーダーでしかなかったのが、エリート、企業家、銀行家たちを「人民」の敵とみなし、「ファシズムとリベラリズム」反対と叫んでは、「欧州連合に服従しない」ためにブレグジット同様に国民投票によるEU離脱を説く。この公約はルペンと同じ。エルコモリ労働法についても国民投票で是非を問おうとするジャコバン的(革命的民主集中主義)路線をとる。FNが極右ポピュリストとすれば、メランション路線は極左ポピュリストとみられ、富裕層と貧乏人、悪対善の二元論で若者や労働者のルペン票がメランションに流れてもおかしくない。

メランションと張り合うマリーヌ・ルペン
 一方、国民戦線党マリーヌ・ルペン党首が、彼女の最大の夢だった国民議会議員になったのだ。ルペンを支持する北部パ・ド・カレ県の選挙区で当選し、欧州議員席を次席に譲る。今までFN議員は2人(1人は彼女の姪マリオン)しかいなかったが、南仏ガール県出コラール議員がLREM女性闘牛士マリ・サラ候補を破り再選。今選挙でなんと8人のFN議員が生まれたが、発言権をもつ議員グループをなすには15人が必要。だがカリスマ的ルペンの姿が議会に現れるのだから面白くなりそうだ。

 最後になったが、第1回投票で落ちたカンバデリ社会党第1書記が6月18日、彼を含め社会党候補らの惨敗の責任をとり、3年務めた第1書記の座を辞任した。はたして社会党の残兵が新しく社会党を再建できるのか、それともマクロンかメランションの党に吸収されるのか。

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