極寒のなかのSDF(ホームレス)

パリの〈連帯の夜〉キャンペーン
Le Parisien(18-2-12)

2月上旬から全国を襲った寒波と大雪のなか、ホームレス(Sans Domicile Fixe: SDF)の緊急支援キャンペーンが叫ばれ、パリ市は2月8-9日の2日間、実際にパリ市内に何人のSDFがいるのか、ボランティアの調査員を募集したところ1800人が応募したそう。2013年の貧困者支援団体エマウスの調べでは、全国にSDFは14万2千人いたが、今日その数は20万人にのぼるとみられている。

パリにはSDFの他にアフリカや東欧、中近東諸国からの難民が極寒の路上で過ごしているのである。昨年マクロンが選挙キャンペーン中に「2018年末までに路上生活者は1人もいないようにする」と第一優先の公約にしたのを国民は忘れていない。

パリ市のSDF緊急救援キャンペーン

パリジャン紙(18-2-12)によれば、通常の緊急宿泊収容能力16,000人分に加え、極寒が始まった2月5日からは各区役所や体育館に簡易ベッドが備えられ緊急救援にあたっているという。NGOのAction Froid(対極寒活動)などは、フェイスブックなどでSDFに部屋を提供できる住民を募る活動をつづけている。2月14日、国営ラジオ放送France Infoによれば、年頭以来全国で8人、そのうちの5人がパリの路上で凍死したという。

2017年、フランス全国で緊急宿泊施設には12万8千人分の収容数と、市が借りる星なしのホテル(パリ:1泊20€〜40€)に4万1千人収容。救急サービス番号115 番に連絡してもパリでは43%のSDF、地方では60%のSDFに、空いているベッドはない、という返事が返ってくるという。

SDFの構成人口

国立経済研究所INSEE によれば、SDFの55%(4万5千人)は外国生まれで、特に多いのはアフリカなど仏語圏諸国からの移民。そのうちの40%は子ども持ち。非仏語圏諸国からのSDFは1万6千人、そのうちの60%は東欧諸国やロシアから来ており、女性は38%を占めている。仏語圏諸国から来ている約6万7千人におよぶ外国人SDFの86%は、子供時代に1度は家族の死や大事故の他、身体障害を抱えており、4人に1人は、フランスで里親施設で過ごしたことがあるという。

SDFの生活水準

SDFとして暮らしながらパート職をもつ人もいるが、70% の家族は種々の貧困家族手当の支給などで月900ユーロ未満で暮らし、30%は月300ユーロ程度。SDFの4人のうち3人は 無職か失業中。24% はたまに仕事にありつけるが、雇用契約はなく、不安定な生活をつづける。また35%は離婚や夫婦のどちらかと死別したり、家庭内暴力による別居や失業による貧困者だ。

SDFのためのカプセルハウス
ストラスブールは2014 年、若い2人の建築学生ニコラ・ロートとニコラ・ウォジクに〈若い才能の地アルザス〉賞を授与した。この2人の作品は、極寒時期にSDFが泊まれる3.75㎡のキャビン(建築費2400〜2600€)で、ベッド1台、犬1匹が眠れる。ただ野宿の生活に慣れたSDFにとって、圧迫感を感じさせないともいえない。一方、09 年からマルセイユには〈木造バンガロー村〉をSDFに提供しており、リールやリヨンではプレハブのSDFのための小屋を集めた〈社会復帰村〉ができているという。

フランスは、社会から落ちこぼれたホームレス人口に加えて、アフリカやマグレブ、東欧諸国から流れ込んでくる移民・難民をも抱え込む、第2次大戦以来の世界人口移動の時代に直面しているといえる。