国民戦線を「国民連合」に改称し再結成

FN党大会でバノン氏を迎えるマリーヌ・ルペン。
Photo: Ph. Pauchet(La Voix du Nord: 18-30-10 )

3月10-11日、国民戦線(FN)党大会がリールで開かれ、マリーヌ・ルペン党首は、党名を「国民戦線」から「国民連合(Rassemblement National)」に改称すると発表した。72 年にFN を設立した父親ジャン=マリ・ルペンは、45年の歴史をもつFNの「政治的暗殺だ!」と叫ぶ。同大会には名誉会長ジャン=マリは招待されず、マリーヌ党首は党の名誉会長職を廃止すると宣言し、父親を完全に排除した。仏極右のシンボルであるジャン=マリがいなくなり、党名を変えても、ルペン3代(父・娘・孫)の専制体制は変わらないことを党員も承知している。

マリーヌ・ルペンが目指すところ
国民を結集することを意味する「Rassemblement National」は、今から32年前、1986年総選挙の際にジャン=マリが使ったスローガンだ。 それ以前の65年にドゴールが出馬した大統領選でも極右候補ジャン=ルイ・ティクシエ=ヴィニャンクールも同じスローガンを使用。従って父親は娘の想像力のなさを嘆く。70年代以降、FN が極右の代名詞となり、一般フランス人にネガティブなイメージを与えてきたため、マリーヌはFNが他の保守政党と同じであり政権を握る才覚があることを示すためにも「国民連合(RN)」と改称したわけだ。しかしながら、昨年5月の大統領選のマクロン候補とのテレビ討論一騎討ちで、マリーヌがマクロンの公約と弁舌に太刀打ちできず、大統領になる器でないことを国民にさらしたことでFN支持者を落胆させている。

米国の極右と手をつなぐ
リール党大会の目玉は、トランプ大統領の元顧問、極右の中の極右政治家スティーヴ・バノン氏が登場したこと。数日前にマリーヌの姪マリオン・マレシャル=ルペンがNYを訪れ、米極右派聴衆を前に、ブロンド、碧眼、八頭身の28歳の極右政治家としてマリオンは「America for Americains, France for French」とトランプ口調で講演し、バノン氏と意気投合し、米仏極右の絆がますます固くなる。 米ポピュリスト、バノン氏は「わたしたちをレイシスト、イスラム排斥者、外国人嫌い、同性愛者嫌いと思わせましょう。その名誉あるバッジを自信を持ってつけてください」と叫び、新たなRN支持者をトランプ式に巻き込む。マリーヌよりも次世代マリオン支持者が急増、RN支持者の83%はマリオンの党復帰を望む。党内での叔母と姪の勢力の競り合いになりそう。

昨年9月、FNの内部分裂でFNナンバー2だったフロリアン・フィリポが脱党し、新党「パトリオット(愛国者たち)」を作った。党改革を唱えるフィリポはジャン=マリにも嫌われ、マリオンとも仲が悪く、従来の党体質を擁護する党員たちと対立した。

マリーヌは政党名を「国民連合」とし(確定は党員への郵便投票後)、サルコジ元大統領の共和党LR(Les Républicains)をますます右寄りにするヴォキエ新党首と同じ路線で難民・移民の入国拒否のスローガンをオウムのようにくり返す。有権者はマリーヌもヴォキエも同じと、LRとRNの境がなくなり極右・保守連合が生まれそう。すでに極右系ポピュリスト勢力が伸びているイタリアやポーランドで両派の連立化が進んでいるように。