10月18日、パリ郊外クレテイユの高校で遅刻した高校生(15歳)がエアソフトガンを教師の顔面に突きつけ欠席扱いにしないように脅した事件を皮切りに、(10月4日ルアーヴルの高校でも4人の高校生がやはりエアソフトガンで教師2人を襲った)。10月23日にはパリ20区の青少年2グループが衝突し、16歳の少年が刃物で刺され病院で死亡。27日午後パリ北郊外サルセル駅で17歳の青年が、15歳と16歳の少年3人に頭を殴られ病院に運ばれたが死亡。被害者が3週間前に少年らが犯したレイプを密告したためだという。9月26日ヴァル・ドワーズ県で17歳の青年が 10人の青少年に松葉杖やペタンク球などでリンチを受け重症、10 月12日やはりパリ郊外シャンピニー・シュル・マルヌで12歳からの約100人にのぼる青少年が2グループに別れ鉄棒を武器に大規模な乱闘を繰り広げる寸前に官憲が取り押さえたという
年頭以来、国内で発生した青少年らの主な乱闘事件は159件、その9割がパリ首都圏で起きており、死者数も昨年1人だったのが今年はすでに10人近くが死んでいる。この急増は仲間たちとのSNS通信などによる増幅効果によると見られている。南仏はマルセイユなどの麻薬ディーラーの縄張り殺人事件とは異なり、イル・ド・フランスで起きている青少年グループのライバル意識が引き金になる衝突が続発。これらは校内にかぎらず街でも起きている。昨年だけで291人の青少年がコントロールを受けたが刑事事件として扱われたのは124人にすぎない。
英国も同じ問題を抱えており、10月26日付のルモンド紙によると、2018年だけで青少年の争いで50人の死人が出ているという。特にナイフによる刺殺事件が続出、10月22日にも青年が刺殺されている。カーン=ロンドン市長は、家庭が崩壊した青少年の非行化が目立っているとし、パトロール態勢を強化するとしている。
カスタネール新内相、ブランケール教育相の共同対策案。
冒頭で述べたエアソフトガンで生徒が教師を脅した場面は生徒の1人がスマホで内外に通信した。カスタネール内相はこの事件を重視し、10月26日ブランケール教育相との共同対策案として、学校によっては校長の認可を得て校内に警官を1人配置することを提案。一方、教師らはツイッターで生徒による種々の被害例を述べているが、ほとんどは校長によるもみ消し姿勢で押し黙る傾向にある。
ガールフレンドが侮辱されたとか、敵意ある視線を浴びたとか、くだらないことを理由に集団暴力に走る青少年のほとんどは落ちこぼれか停学処分を受けており、自分の属するグループ内で自分の腕力を示そうとする破れかぶれの青少年が多いという。カスタネール内相は、退学処分を受けた13~18歳の生徒を指導する特殊施設を設け、指導教員の他に警官か軍人を派遣し、彼らを更生させるという対策案も掲げる。ちなみに統計的に見ると、1000人の生徒に対し13.8 件(職業校:14.3件)の校内暴力が起きている。職業校を含む中高校内での教師への暴言、脅し、中傷、侮辱、暴力を前に教職員らの孤立感はつのる一方。社会学者マルワン・モハメッドは「50年前はアトリエや工場が学業を止めた若者に日常の人間関係を提供していたが、今は学校の成績だけが評価され、彼らには退学後、非行生活の延長しかない」と今の青少年の迷える姿を語る。単親家庭が増えている中、幼児期からの家庭教育の不在も関係あるよう。