セクハラや性暴力から未成年者への性犯罪

女性に対するセクハラや性暴力スキャンダルがメディアを賑わせているなかで、未成年者への性暴力やレイプ、近親姦などの問題が浮かび上がってきている。フランスでは一般犯罪の未成年は13 歳未満だが、「性に関する未成年」は15歳未満となっている。

ドイツやオーストリアの性的未成年は14歳未満、オランダは12 歳未満とし、性関係はどんなものでも全てレイプ扱いしている。ベルギーも14 歳未満(英国は13歳)との性関係を同様にレイプと見なしている。フランスは性的未成年を従来の15歳未満を維持するか、社会•風俗の変化を考慮に入れ、この年齢を見直すべきかが問題になっている。

マクロン大統領はどう考えているのだろうか。昨年11月25日、「性暴力反対デー」の日に「個人的意見として、性に関する未成年年齢を15歳のままとしたい」と表明している。一方、シアッパ男女平等閣外相は、その年齢を「13〜15歳の間としたい」との意向だが、草案作成にあたりまだはっきりした年齢は確定していない。

性犯罪裁判

昨年11月、セーヌ・エ・マルヌ県重罪院は、14歳だった教え子と数カ月性関係もった31歳の元数学教師を裁いた。2日間にわたった裁判で検事長は禁固8年及び司法・社会的監視を求刑したが、陪審員たちは、レイプ容疑となる「強制、脅迫、暴力、不意行為」の4条件がそろっていないので、強姦罪は成立しないとして無罪放免判決を下した。

やはり昨年11月、ポントワーズの法廷では、17年4月24日、当時11 歳の少女が自宅付近の公園で従姉の少女と遊んでいたところ、28 歳の男に言い寄られ、アパートの踊り場でも性交渉をもったという。法廷で、被告は「彼女は性交渉に同意した」と主張する。検察は「強制や暴力はなかった」として、彼を「性的侵害」容疑で起訴した。

未成年者への性犯罪処罰

現行では、15歳未満者との性関係は同意如何に関わらず全て禁じられており、「性的侵害」、「性暴力」、さらに「強姦罪」となる。「性的侵害」は禁固5年+7万5千ユーロの罰金。「性暴力」に対しては禁固7〜10 年+罰金10万ユーロ、強姦罪は懲役20 年+15万ユーロとなる。また犯罪者が親族や、被害者に対して何らかの権威をもつ者の場合はさらに重くなる。教師や課外活動指導員、ボーイスカウトや、今は少なくなったカテキズム(キリスト教理説明)担当の神父らによる少年少女らへの性的侵害行為は今でもある。少年期に受けたこのような被害は、多くの場合、家庭でもタブーとなり、被害者のトラウマとなり、それを告発するのは成人してからのケースが多い。しかし子ども時代に受けた被害の証拠を挙げるのはむずかしい。

昨年1月、国民議会は未成年者に対する性犯罪の時効を成人してから10年だったのを20年に延長し、被害者は38 歳まで未成年時代に受けた性犯罪を告発できるようになった。ただ父親や叔父、祖父などによる性的侵害や性暴力を受け、そのトラウマに苦しんでいる人も多い。カナダなどは、未成年者に対する性犯罪の時効はなく、生涯、容疑者を告発できるのである。

未成年被害者には、言葉や動作で同意や拒否することはむずかしく、「同意はあり得ない」とする「推定非同意」事項を新法案に加えることで、少女の「同意があった」という弁護は一切不可能になる。おじさんや祖父、先生などに「きみは可愛いね」といって言い寄られる少女には、「いやよ!」とオオカミの前脚をふりはらうだけの判断力と意志が備わっていないとみるからである。そして性犯罪を犯した者には、生涯、未成年者と接触する機会のある職業やボランティア活動にも就けなくなる。これからはフェイスブックなどによる未成年者への性的プロポーズなど、どこまで監視できるかが問題に。

未成年被害者が抱えるトラウマ

コッパー= ロワイエ児童・少年精神科医はル・モンド紙(17-12-21)に掲載された記事内で、未成年を15 歳未満とすべきだと提言する。なぜならかなりませているように見えても、15歳未満の少女は成熟期の戸口にあり、ポルノ映像を見ていても、性行為がどんなものであるか想像も予想もできず、14歳未満では彼女らの体が犯されることはノーマルなことでないことも判断できない年齢なので、未成年15歳未満を維持すべきだと説く。

刑法のうえで、この年齢が13 歳になるか14歳になるか、児童から思春期、成人するまでの心理的、精神的にあまりにも複雑なこの時期の年齢を刑法が規定するにしても、被害によるトラウマまでは刑罰の対象にならないのである。未成年時代に父親などに犯され、売春婦になった女性もおり、バルバラはシャンソン『黒い鷲』を父親に喩えて歌っているのである。

 

*拙訳書『それは6 歳からだった(ある近親姦被害者の証言)』(緑風出版)の著者イザベル・オブリ氏は「世界近親姦被害者協会AIVI 」を立ち上げ、被害者支援のために闘っている。