ベルヴィルの街娼たち。

256602 ノエル・マランダン監督の処女作『La Marcheuse街娼』が公開されている。もう何年も前からベルヴィル交差点の歩道に外見的にも40〜60歳とみられる地味な服装の中国人女性がうろうろしているのをよく見かける。『街娼』は中国人女性リンの日常を追っている。北京北方の工業地帯で父や兄弟、夫も解雇され、中学生の娘をつれて不法滞在する。フランス人高齢者の面倒をみる代わりに、アパルトマンの1室を保証されるが、隣の暴力団上がりの男と複雑な関係をもちながら滞在許可を得るために彼と白紙結婚をするが最後に裏切られるはめに。

パリジャン紙(16-2-1)によると、2月1日、同地区で売春網が検挙され、8人の中国人女性が取り調べられた。彼女らはアパートを所有する同胞の顔役に2段ベッド暮らしの4人部屋に1人の家賃月600〜1000ユーロを払う。そして近所のホテル(客が払う)または客のアパートに行って1回40〜60ユーロで日に10人くらい客をとるという。客の暴力に出会うこともあり、売春婦の殺害がこの10年間に5件起きている。

フランスでは売春法は、海底に潜むヘビのように頭をもたげたり引っ込めたりする。2003年サルコジ内務相時代に売春婦の街頭での客引き行為を禁じ、1500ユーロの罰金を科す法案が議会で審議された。2013年にも売春客に同額の罰金を科す法案が提出され、昨年3月に上院で、6月に国民議会で可決された。その間、中国人売春婦たちはマスクを被って警官のしつこい取締りや同法案に対し抗議デモをベルヴィルで繰り返した。昨年10月14日、上院の最終採決で売春客の罰金法案が反対190票、賛成117票で取り下げられた。売春を100%追放するのは難しいのだろう。

しかし90%の売春婦が外国人であり、不法滞在の売春婦がその仕事を止め尋常な仕事に就くという誓約書を警察に提出すれば、6カ月の一時滞在許可書を出すという修正案は残った。もともと彼女らは中華レストランで働くつもりでパリに来たのだ。それにも就けない女性たちは、「中国式マッサージ」という、パリの街に雨後のタケノコのように進出している店で不法滞在者として働くのだろう。

ベルヴィルには中国人売春婦が約300人いるとみられる。上記映画にも出てくるが、彼女らはカフェなどに集まって、組合とまではいかなくても「Roses de l’acier(鋼のバラ」というアソシエーションを持っている。一般的に彼女らが同国人男性と値段交渉している姿はあまり見かけない。同胞に屈辱的姿を見られたくないからだろう。近所のレストラン店主らも歩道に立つ同胞女性を歓迎していないようだ。

『街娼』の上映後、廻りを見たら、60歳前後の男性客が多かったのは意外だった。たぶん20〜50代の男性は無料の出会い系サイトを利用しているのだろう。