SNCF (仏国鉄)の改革なるか。

SNCF 改革:発車ご注意!(Libération:18-2-16 )

1995年、国鉄改革を含めた年金制度改革ジュペ案に大規模な抗議運動が起こり、ジュペ元首相は改革を断念した。95年に匹敵する大規模な反対運動が懸念されており、政界でタブー視されてきたSNCF改革に、就任1年になっていないマクロン大統領が挑戦する。

スピネッタ元エールフランス総裁による改革案が2月15日に発表され、2月26日、フィリップ首相が政府案として公表した。SNCFの赤字は年に30億ユーロ、20 年間で累積赤字額は500億ユーロにものぼっている。線路の老朽化に対応する修理費だけでも年40億ユーロ(9千キロに及ぶ地方線だけで年17億ユーロ)かかっている。この面でもSNCFはドイツなどに比べ遅れている。

そんな中で列車の遅延や装置の故障などに対する乗客の不満が絶えない。スウェーデンや英国、ドイツなどは90年代に鉄道の民営化を果たした。EU内の市場開放を迫られるフランスのSNCF改革は、マクロン大統領にとっての試金石になりそう。

SNCFの歴史
フランス国鉄(SNCF)になる以前は、各地方の民間交通機関が運営していたのを1937 年、国営化され仏国鉄になった。ナチ占領時代の鉄道員(cheminots)のサボタージュ活動は多くの小説や映画にも描かれている。レジスタンスをした鉄道員900人は銃殺、1200人はアウシュヴィッツに送還され、約2400人がナチドイツ軍の襲撃で死んでいる。それだけに鉄道員の存在はフランスの現代史の一部を担っている。1920年代に国鉄職員が不足していたので募集するため、公務員の中でも特別な優遇資格が与えられた。今回の改革案では、新規鉄道員には、この特権資格が適用されないとあって、それが一番問題になっている。                                                          

80~90年TGV黄金時代から赤字累積
1980年代以降、TGV(超高速列車)さまさまのSNCFは、TGV拡充への投資を惜しまなかった。同時期に航空運賃も下がっていった。国内2700キロに及ぶTGV網の乗客数は1日平均30万人。2万7000キロ(32%)を網羅するローカル線の利用者は年300万人(2%)で減る一方。その反対に地方急行列車(TER)の乗客数は、年3億3000万人と急増(2016年)。改革案は赤字軽減のためTGVの停車駅数を減らし、フィリップ首相はローカル線は廃止しないというが、地方の小さい町の駅は止らず、町間運行バスに切り替えている町が増えている。

国鉄職員の特権的資格
現在、国鉄職員は15万人いる。今まで最良の職業とは、郵便局員か電話局員、鉄道員になるのが一番安全といわれてきた。なぜならよほどの落度以外、定年まで解雇されることなく、運転手の定年は50歳、駅内職務は55歳だった。だが17年1月以来、毎年4カ月ずつ伸び、2024年にはそれぞれ52歳、57歳になる。その他、本人は定年後も運賃は無料、家族・身内は10%料金。また週35時間以上、例えば7時間以上勤務、または夜勤や祝祭日も働いたら、超過時間を合計した休暇がもらえ、運転手は最高22日間、夜勤職員には28日間の有給休暇が追加される。その他医療費は無料、駅付属の住居を利用できる。これらの特権は、95年にTélécom(フランス電話局)がOrange になったときと同様に、新社員には適用しない方針だ。また赤字額軽減のために05~15年に1万8000人削減している。これら大胆な対策は、国鉄職員のアイデンティティ剥奪と同じであり、彼らが一番恐れているのは、新職員への特権資格の廃止と、貨物列車を含めた民営法人化への動きだろう。労組は3月14日、3月22日に大規模な抗議デモを予定している。

マクロン政権は夏までにこの大改革に目鼻をつけたいところ。そこでオルドナンス(政府が発布し、公示後直ちに効力を発する)によって改革しようとする、マクロン大統領のTGV級超速球型政治は、国鉄職員や他の公務員の抗議の芽が出る前に摘み取るやり方だ。