セクハラ疑惑、ニコラ・ユロ、おまえもか!

ハリウッドの大物ワインスティーンのセックス・スキャンダルが火をつけた「#Metoo」や「#Balancetonporc」などによる女性の告発運動は鎮まるどころか、10年、20年前に、特に政界人による性疑惑への女性の怨念は、時限爆弾となって、当事者が忘れた頃に爆発する。企業の上司などを訴えると、女性社員は勝訴しても必ず解雇になるのが一般的で、告発の対象になるのは政界人が多い。

週刊誌〈ebdo〉のスクープ特集
1カ月半ほど前に創刊されたばかりの週刊誌〈ebdo〉の2月9日号が「ニコラ・ユロ疑惑」の大見出しで特集を組んだ。閣僚ナンバー3、ニコラ・ユロ環境移行相の過去のセクハラ疑惑で、ユロ氏がテレビの人気ルポ番組〈ユシュアイア〉の司会者だった頃の1997年夏、某政治家の娘といわれている、当時20歳だったマリーさん(偽名)はユロ財団でも働いていた。ユロ氏は42歳の大スター。11年後の08年 マリーさんは警察に訴えたが時効10年が過ぎていた。同年夏、ユロ氏はブルターニュ警察から マリーさんの供述内容を知り、同年8月16日、彼は全面的に内容を否定した。11月サンマロの検察局はこの件を不起訴とした。

ニコラ・ユロ氏の頭上に暗雲が漂う

「ニコラ・ユロ疑惑」ebdo(18-2-9)

1997年以来マリー さんが根に持つこの疑惑は、エコロジー派政治家ユロ氏の進路にも影を落したようで、07年、12年と大統領選に出馬することもあきらめ、シラク、サルコジ、オランダの政権参加も辞退したのは、この件が頭にあったのではと見られている。7年前に出版されたユロ氏の伝記『サン・ニコラ Sain Nicolas(良識あるニコラ)』の著者ベランジェール・ボントさんは〈ebdo〉誌の中で、「彼は根っからの女たらし、女のコレクター、強力な征服者」と語り、彼の3人目の夫人のインタビューによれば、夫人は「最初の頃はいやでしたが、今は見て見ぬふりしている」とのこと。マリーさんの証言や彼女の父親の意見、ユロ氏をめぐるウワサまでスクープとして掲載した〈ebdo〉をユロ氏は中傷、誹謗記事として訴えている。テレビのインタビューでも彼は「ウワサは人を殺す」と、この種の記事で読者の低俗な興味を煽る同誌を批判。

政治家を誹謗する告発がつづく
1月27日付ル・モンド紙によると、将来有望な若いダルマナン会計相(35)に、09年ホテルの部屋で「暴行・レイプ」されたと、17年6月、46歳の女性が訴えたが、検察側が「嫌疑不十分」として不起訴とした。ダルマナン会計相は「誹謗、中傷」としてその女性を告訴した。だが一難去ってまた一難、ル・ポワン誌(18-2-14)によれば、同相が14〜17年北部トゥルコワン市長時代の15-16年、住民の1女性に彼と関係を持てば住居を与えると、「弱い者への権力乱用」容疑が浮上。だが2月16日パリ検察側は、書かれたものや証拠類がないことで、取調べは成立しないとした。

セクハラ被害者女性の「告発の自由」が活用され、今後政敵を陥れるのに一番効果的なのは、若い女性を対敵の身辺に送り込みセクハラ被害者を演じさせることでは? 政界人は10年、20年後に爆発するかもしれない時限爆弾に注意し、同時に男性の性的欲求のコントロールも必要になりそう。

とくにニコラ・ユロの昔の疑惑をめぐり、L’OBS(18-2-15)などは、ツイッターや#Metooなどに送信される匿名の証言や巷のウワサを集めた暴露風記事で販売部数を伸ばそうとするジャーナリズムを問題視する数人の識者の意見を掲載している。2月14日マクロン大統領も、次々に明るみに出る政界人の性疑惑に対し、メディアが司法の代わりになり疑惑やウワサを国民に植え付ける「疑惑共和国République du soupçon」にならないようにと警告した。