ゆぅゆぅと、マルセイユ。 マルセイユに着いた!と、さっそくこの夏初のパスティスで乾杯していると、バーの青年が「最近は、ノートル・ダム・ド・ラ・ガルド教会の丘で夕陽を見るのがマルセイユっ子たちに人気だよ」と教えてくれた。 日暮れ前に、この町の人々が親しみを込めて「La Bonne Mère よき母」と呼ぶその教会まで急な坂道を登っていくと、丘の斜面にはもうたくさんの人が海のほうを向いて座り、陽が沈むのを待っていた。広い空、地中海、そこに浮かぶ島々、旧市街、大型団地、港….。壮大なパノラマを黙って眺める人や、おしゃべりに興じる人々、走り回る子どもたちの、ゆったりとした夜のはじまり。 今から2600年前、ギリシャからポカイア人がやってきて築いたマルセイユはフランス最古の都市だが、いつの時代も人や宗教、料理や音楽がやって来るのを大きく腕を広げ、迎え入れてきた。悠久の都を一望しながら、自分もこの町の深い懐に入れてもらった気がした。 今回はもう少し…というか、3万年ほど時をさかのぼってみたい。先史時代からこの地域に人がいたことを示す「コスケール洞窟」が、30年かけてようやく再現されオープンしたのが話題なのだ。(六) 次ページへつづく。
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