マクロン大統領は10月2日、「分離主義」に対する政策の内容を明らかにし、この政策を反映した反分離主義法案が12月9日に閣議に提出される予定だとした。 大統領は、昨年10月のパリ警視庁テロの際、「分離主義」という言葉を使い始め、2月には「イスラム分離主義」と闘うと発言していた。2日の演説では、移民が多い地区のゲットー化、移民同化政策失敗によって国が自ら分離主義を作り出したと国の責任を一部認めながらも、子どもの学校教育放棄や共同体主義による文化・スポーツ活動などにフランスの原則に合わない反社会的動きがあると強調した。 まず、学校教育については、2021年9月から3歳からの幼稚園を含む学校を義務化し、在宅教育はごく例外的なものに限定するとした。現在5万人(教育省の数字は4.1万人)の義務教育年齢の子どもが非認可の学校で教育を受けており、なかには宗教に偏ったものもあるとした。また、マグレブ諸国が派遣する教師による移民子弟向けの外国語教育(ELCO)は廃止。同時に、教育省と学習要綱契約を交わさない学校(約1700校)への監視を強化する。さらに、トルコ、アルジェリア、モロッコで養成されたイマームをフランスのモスクに受け入れる制度を廃止し、国の基本原則を守る憲章に署名した国内養成のイマームを採用する。また、過激思想を広めるとされるモスクや協会への監視を強め、公的援助を受ける協会については「ライシテ(非宗教性)」憲章に署名させるなどが主な内容だ。 この大統領の方針には、左派や人権擁護団体などから「偽善的」、「抑圧政策は建設的でない」などの批判や、イスラム教徒やモスク関係者からはムスリム全体を敵視しているとして反発の声がある。与党内でも大統領が新保守主義に姿勢転換したと指摘する人もいる。 9月に反分離主義法案の骨子を明らかにしたダルマナン内相は、「社会の野蛮化(ensauvagement)」「わが国は共同体主義に病んでおり、政治的イスラムが国を覆えそうとしている」といった発言を7月以降繰り返している。まるで全ムスリムを過激派予備軍とみなすような発言は国民を分断し、憎悪感情を煽るばかりではないだろうか。次期大統領選挙で右派票を集めるためともささやかれているが、上記のようなマクロン発言も右傾化の印象を与える。コロナ禍で貧困層がより貧困化する時世に、貧困者を支援して国民をまとめるのでなく分断化することは得策とは思えないのだが…。(し)
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