Seiichi HORIUCHI「堀内誠一 絵本の世界」展

11月21日(水)〜12月8日(土)

『堀内誠一 絵本の世界』展

 

紙芝居『うみからきたちからもち』(ほるぷ出版、1977年)(左)と、今年、クラマールの図書館で再発見された、タイトルがフランス語で書かれた同じ話の紙芝居原画。

    2018年の春、クラマールにある児童図書館 ”La Petite Bibliothèque Ronde”(小さなまるい図書館)からエスパス・ジャポンに、同館が保存している紙芝居”Un garçon venu de la mer” (海からきた男の子)の原画の作者について問い合わせがありました。 この紙芝居は45年前に、堀内誠一さんがこの図書館に集まる子どもたちのために描いたものでした。この原画の再発見を機に同図書館はいま、フランスでは知られていない絵本作家 Seiichi HORIUCHI に関するさまざまな催しを企画しています。(11月25日から)


 1974年から家族とともにパリ郊外のアントニーに住んだ堀内さんは、同年に創刊された『いりふねでふね』と、それに続く日本語新聞 ”ovni”の基本を作ってくれた人です。企画から取材、絵入りの原稿、手書きの見出し、広告のデザイン、印刷のための版下づくりから製版まで、すべてにわたって手を動かしていた堀内さん。その仕事ぶりは驚くほどの速さで、しかもじつに的確なものした。

オヴニーの前身、『いりふね・でふね』創刊号と、その翌年75年6月の第9号。

 エスパス・ジャポンでは、小さなまるい図書館の企画に合わせ、多彩な堀内さんの仕事の一端を、絵本を中心に展示・紹介します。

堀内さんの絵本。

 小さなまるい図書館が保存していた紙芝居『海からきた男の子』は、堀内さんが単身パリ滞在中だった1973年に描かれ、直接図書館に寄贈されていたため、家族もその存在を知りませんでした。画面からあふれそうな勢いを感じさせる作品は、デンマークの民話をもとにしたもので、後に改めて描きなおした紙芝居『海からきたちからもち』として刊行されています。

堀内さんは他にも『こぶたのまーち』や、『したきりすずめ』『ながぐつをはいたねこ』などの紙芝居を制作していますが、どれも画面から離れて見る子どもたちにわかりやすいよう、太めの輪郭線で描かれています。『ながぐつをはいたねこ』はやはりアントニー滞在中に、クラマールの子どもたちのために黒1色の描線で描かれたものですが、後に堀内さん風に彩色されたカラー版が発行されています。

『ロボットカミイ』1970年 福音館書店

 堀内さんの絵本といえば、『たろうのおでかけ』のたろうや『ぐるんぱのようちえん』のぐるんぱ、『ロボット・カミイ』のカミイといった、主役たちの姿が思い浮かびます。これらの絵はそれぞれの話によって違った方法で描かれながら、どれもが子どもたちの心にいつまでも残る魅力を持っています。

白地に軽快な線で描かれ、ほっぺたに赤い丸の付いたたろうと、筆触を生かして描かれた象のぐるんぱは、ほぼ同じ時期に制作されました。堀内さんの多彩な絵は時期によって画風が異なるのではなく、テーマや話の内容によっていちばん適切な描き方を選んでいたのです。画材もパステル、カラーインク、フェルトペン、水彩やアクリル絵具と、絵によって自由自在に使い分けていました。コンパスと定規を使った幾何学的な絵の『くるまはいくつ』、平面的な色面で描かれた『ちのはなし』や『てとゆび』などの科学絵本では、明快な図解で原理や仕組みがわかりやすく説明されています。

『おひさまがいっぱい』1975年 童心社と『こすずめのぼうけん』1977年 福音館書店。

 いっぽう画面全体を水彩で描いた『こすずめのぼうけん』では、美しい自然の風景がみごとに表現されています。こすずめが迷いながら飛んだ川原や茂みのある草原などは、原作者エインズワースが暮らしたイングランド北部の田園風景。おそらく堀内さんはこの地方を旅行したときの観察と印象をもとに、こすずめの視点から描いたものと思います。また『おひさまがいっぱい』で描かれている、起伏のある緑の中に赤い瓦屋根の家が点在する情景は、堀内さんがたびたび訪れた南仏によく見られる景色です。パリ近郊の住宅地にも多かった赤い瓦屋根は、近年どんどんその姿を消しているのですが。

 雑誌のアート・ディレクションやレイアウト、ロゴ制作などのデザインの仕事でも、絵本やイラストレーションの仕事でも、堀内さんはそのテーマの本質を捉えて、それをぴったりした形で表わすことのできる天才でした。

『ことばのえほん』『かずのえほん』や『マザーグースのうた』で堀内さんとコンビを組んだ谷川俊太郎さんは、『絵本ナビ』のインタビューの中で、「…渡せばそれでできちゃう、本当にそんな感じでしたね。僕が訳したものを出版社の方が堀内さんに送ってくれるだけ。後はそれを全部レイアウトして順序も決めて、それで1冊目、2冊目、3冊目って彼が作ってくれる。彼は編集者としての才能もすごいんですよ…」と語っています。

堀内さんが描いたぐるんぱやたろーたちは、これからもたくさんの子どもたちに、世代を超えていつまでも愛されていくことでしょう。

『マザーグースのうた』は全5集。1975年 草思社刊。訳は谷川俊太郎さん。

 絵本作家でイラストレーター、グラフィックデザイナー堀内誠一さん(1932-87)は、オヴニーの母体となった『いりふね・でふね』を創刊し、オヴニー発行の地盤を作ってくれました。『マザーグースのうた』『ぐるんぱのようちえん』など何世代にもわたって愛される代表的な絵本の世界を紹介。著書もご覧いただけます。

 

 


Espace Japon

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