夜中のパリ現代アート散策 Nuit Blanche 2018

市庁舎広場には、ウーゴ・シャヴィの作品。

NUIT BLANCHE 2018

 17回目のニュイ・ブランシュが、10月6日(土)の夜から7日(日)の朝にかけて開催される。今年のコミッショナーは、美術評論家で、コレージュ・デ・ベルナルダン*の客員コミッショナーであるガエル・シャルボー。パリ市内に〈Constellation〉と呼ばれる拠点4カ所を設け、そこを中心にインスタレーション、ダンス、ビデオ、観客参加型のイベントが繰り広げられるのを、一般市民が夜を徹して楽しめるよう計画されている。

*13世紀にシトー会修道士の教育機関として創立。現在は文化センター。

(左)ニュイ・ブランシュ2018コミッショナーのガエル・シャルボー。(右)ウーゴ・シャヴィ。これからが楽しみなアーチスト。

 いくつかを紹介しよう。今年、パリ市庁舎前の大広場を展示場として射止めたのは、31歳のウーゴ・シャヴィだ。

ナシオン広場中央にある彫刻『共和国の勝利』の中の「自由の神」をもとに制作した、未完成で、一部が欠けた彫刻を置いた。床に大きな頭部がころがっており(冒頭の写真)、高い足場の上には、自由の神とその上に乗って作業をする人がいる(右の写真)。「自由は未完成。自分たちが作っていく」と言っているかのようだ。

クラッシックなものも作れる技術を持ちながら、あえて粗削りな彫刻を作る。今後が楽しみな若手だ。

 

 市庁舎近くの国際アーティスト寮「シテ・デ・ザール」の庭には、滞在していたトーゴ人彫刻家サディク・ウクペジョノの『突然変異』がある。頭のない4人の人間が、200個の頭を集めた棚を囲んでいる、目鼻もはっきりしていない頭もある。「我々は何なのか、どこから来たのか」という問いを突き詰めてこの作品ができた、とウクペジョノは言う。

『突然変異』

 シテ・デ・ザールの向かい側のフルネ図書館の中庭は、ユーゴ・アエレックの舞台装置のようなインスタレーションで華やかに彩られている。

テーマは「死」。アエレックは死をどうやって祝福したらよいのか、と考え、芝居の装置を使ってみた。ギロチン台に上るときのような階段、あの世とこの世の境目を示すような色とりどりのカーテンが象徴的だ。地面には死者に捧げる花を置き、観客が自由に持って帰れるようにした。

ユーゴ・アエレックの作品

   今年のニュイ・ブランシュに展示された作品のいくつかは、一夜限りではなく、続けて数週間展示することが決まっている。そのうちの1つが、5区のコレ―ジュ・デ・ベルナルダンで11月10日まで展示される、アブデルカデル・ベンチャンマの『世界が生まれるときの響き』だ。

アブデルカデル・ベンチャンマの『世界が生まれるときの響き』

アブデルカデル・ベンチャンマ

 入り口ホールの床に、生まれるときの振動や波動を黒のアクリル絵の具で抽象的に描いた。内覧会では4人のトロンボーン奏者が演奏していたが、6日は18人の男女のトロンボーン奏者が21時と23時に建物の中と外で演奏し、建物を音で覆う。

ベンチャンマに「この絵を描くとき、音楽を聴いたか」と尋ねると、「テンポの速いラップやエレクトリック音楽と静かなピアノ曲を聴きながら制作した」と答えた。6日はどんな音楽が奏でられ、絵が音楽とどう絡んで心の中に入ってくるのか、楽しみだ。

 ポルト・ドレの移民歴史博物館の作品も、10月28日まで展示される。バンジャマン・ロワイヨテのインスタレーションとビデオだ。

(左)金色の缶でできた塔(右)バンジャマン・ロワイヨテ

 フランス人だが、フランスでの展覧会は初めて。シリアの駄菓子屋で売っているアメを題材にして、「平凡なものが大切で素晴らしいものになる」という彼のテーマを表した。うずたかく積み上げられた金色のお茶缶の中にはバラの香りがするシリアのアメが入っている。ビデオでは、避難民となったシリア人がアメの思い出を語っている。アメは故国を思う人々の気持ちの象徴だ。

アメ売りの屋台。

 ヴィレット公園のいくつかのイベントの中であっと驚く楽しさがあるのは、ファビアン・レオスティックの赤い粘土の噴水だ。突然が噴水が上がり、赤い色の名残が大気中に残る。

 もう一つの拠点、アンヴァリッドからアレクサンドル3世端を渡り、グランパレとプチパレを見るコースも見逃せない。

 家族連れにはヴァンセンヌの動物園がお勧め。この日は夜間営業する。昼間は寝ている夜行動物にとっては、人が夜、自分たちを見に来ることは刺激になって嬉しいのだ、と動物園の獣医もニュイ・ブランシュに門を開くことに賛成したという。

 内覧会で見た限りの印象では。今年は若手が多く、比較的穏やかで奇をてらわない作品が多かった。(羽)

Nuit Blanche 2018 : 今年はサン・ルイ島、アンヴァリッド、ラ・ヴィレット、ポルト・ドレなど4拠点(Constellation)。子ども連れのコース、拠点とは外れた場所での展示などもある。障害者の付添い(01.4341.7067)や、視覚障害者向きガイドは要予約(01.4274.1787)。

https://quefaire.paris.fr/nuitblanche