「ニュイ・ブランシュ」2019。パリ五輪を意識しスポーツ・大衆路線。

Pilar Albarracinnoのパフォーマンス。

秋恒例となった、一晩中、パリ中で現代アートを無料で見られる催し「ニュイ・ブランシュ(白夜)」が、10月5日(土)夜から6日(日)明け方にかけて行われる。

これまでは年ごとに社会的、文学的なテーマがあり、それに沿った現代美術作品を見て回った。ところが今年は様子が違う。アンヌ・イダルゴ=パリ市長が、事前に記者会見を行うほどの肝の入れようなのだ(近年、ニュイ・ブランシュの記者会見があったことはない)。その時にはピンとこなかったが、4日夜のプレス内覧ツアーに参加して、2024年に開催予定のパリ・オリンピックに焦点を当てたものだとはっきりわかった。

”Grande Traversée パリ大横断” 競走。パリを東コースと西コースに分かれて走る。

それゆえ今年のテーマは「動き」である。美術にスポーツを掛け合わせ、マラソンしながら美術館を回ったり、自転車を漕ぐことで光を環状道路に流していく。ダンス、パレードがあり、歩きながらパフォーマンスをするアーティストもいる。必然的に、これまでより大衆的でわかりやすいイベントになった。今年のアートディレクターはラ・ヴィレット大ホール・公園公共施設会長のディディエ・フュシリエ。

中心となるイベントは、コンコルド広場からバスティーユ広場まで練り歩くパレードだ。日本の山車のように、巨大な人形や美術家の作品を運んでいく。空中を飛んでいるような巨大な恐竜も出る。家族全員で楽しめそうだ。

内覧ツアーでは、そのいくつかが紹介された(写真下)。ジュネーヴで活動するシルヴィー・フルリーは、自分そっくりの空気人形を作った。彫刻、絵画、映画も製作する1991年生まれのレオナール・マルタンは、フィレンツェ軍とシエナ軍が戦った1432年の「サン・ロマーノの戦い」を描いたパオロ・ウッチェロの絵を元に、騎乗の軍人を作った。

(左)シルヴィー・フルリーの空気人形(右)レオナール・マルタンの軍人

現代フランス美術界を代表する作家の一人、アネット・メサジェは、テントの中にマイム役者二人が入り、仮面やコスチュームで影絵のような効果を出しながら動物の声や奇声を発するパフォーマンスシーンを作った(写真下)。

「なぜ白い夜と言って黒い夜とは言わないの」という声が何度も繰り返される。テントの中では役者が動物になる。「コクトーの映画『美女と野獣』が好きで何度も見た」と言うメサジェにとって、夜は人が動物になる時であり、自分だけの秘密の時間だ。パレードでは、美しく飾った2頭の馬がテントを運ぶ。バスティーユ広場に着いた後は、モンスーリ公園に移される。

アネット・メサジェのテント。

パレ・ロワイヤルにある白黒の縞模様彫刻を作ったことで知られるダニエル・ビュランは、エッフェル塔の下に巨大な鏡を斜めに置いて、エッフェル塔を映し出した。鏡を通して風景を違った風に見る仕掛けだ。パレードの山車では周囲の建物を映しながら移動する。鏡を使って風景を写す発想は他のアーティストもやっており、目新しいものではないが、移動しながら風景を映し出すところがミソなのだろう。

音楽の要素が強く出ているのも今年の特徴だ。

パレードの到着点、バスティーユ広場には複数の楽団が待ち構えており、到着前から交代で演奏する。その一つ、「パリの人魚 La sirène de Paris」は団員80名。主にフランス音楽をレパートリーとするアマチュア・オーケストラだが、パレードでは踊りたくなるようなリズムのラテン音楽を演奏する。平均年齢25歳で、「プロを目指すアマチュア音楽家の集団」だ。指揮者に合わせて、振り付けを伴った演奏を繰り広げる。

オペラファンはオペラ・コミックの「カラオケオペラ」に参加して、有名な歌曲をカラオケで歌うことができる(歌と歌詞はこちら)。フィルハーモニーでは声楽家が9時間、シューマンの歌曲を歌う。

演奏するオーケストラ「パリの人魚」

スポーツをパロディ化したのはメリル・レヴィス。パリ19区のスポーツセンター(*)で「トラヴボール Travball」という自ら考案したスポーツを市民に参加してもらって行う。長い枕をボール代わりに奪い合うという他愛もないゲームで、チームリーダー、チアリーダー、アーティストは、およそスポーツとは無縁な派手な服装のドラッグクイーンだ。「スポーツ=たくましさ」という先入観と、異なる人への差別の舞台となりがちなスポーツ界に対する揶揄(やゆ)がこめられている。

(*)Mehryl Levisse ”Travball”
会場:Centre sportif Ladoumègue
住所:39 rue des Petits Ponts 75019

先入観といえば、女性を先入観で見て型にはめる社会を批判するスペインのアーティスト、ピラール・アルバラシンは、あえて伝統的なフラメンコダンサーの衣装をつけた老若男女176人とパリの街を練り歩くパフォーマンスを繰り広げる。最後はオペラコミックで全員がダイ・インをし、女性への暴力に抗議する(記事冒頭のパフォーマンスの写真)。男性も女装して参加する。まさに今フランスが直面している問題をアートで表現するパフォーマンスだ。(羽)

17h : 伝統的フラメンコの衣装を着て、コンコルド広場集合(衣装持っている方、参加可能です!)
19h – 22h : リヴォリ通りのパレードに参加
22h30 : バスチーユ広場パレード終着地点からオペラ・コミックへ
23h00 – 23h45 : オペラ・コミックにてパフォーマンス

フラメンコの衣装をまとい、パフォーマンスをする人たち。

ニュイ・ブランシュの公式サイト
14h-17h :Avenue Winston Churchillでパレードの山車を展示。
19h-22h:コンコルド広場からバスティーユ広場までパレード


 

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