夭逝の天才デザイナー、光と影。 『McQueen』

©Vertigo Films

 例によって、あえて予備知識なしで観た『McQueen / マックイーン:モードの反逆児』に、またまたのめり込んだ。

 ロンドンの下町、労働者階級のマックイーン家に末っ子として生まれたリー君は、小太りで憎めないタイプの男の子、学業はイマイチだ。16歳で自ら服飾業界へ。最初はサヴィル・ロー通りの紳士服の仕立て屋で働くも、武者修行でイタリアへ出向いたり、と行動的である。23歳の時、失業中に10ポンドで仕込んだ素材で初のファッションショーを開く。そこから彼はあっと言う間に時代の寵児となって坂を駆け上り、ロンドンから世界のファンション業界を凌駕する。パリのメゾン、ジバンシィのデザイナーに抜擢されたのは、自らの名を冠したブランドの立ち上げからわずか4年後、27歳の時だ。

 彼が服作りに没頭している姿が好きだ。中学生の彼にスカートを作ってもらったという姉の証言。小さい頃から一貫して彼は自分の道を知っていた。ぶれずに突き進んで絶頂期に命を絶った天才だ。

 この映画は、ファッション・クリエーター、アレキサンダー・マックイーン(1969 – 2010)の生涯を、映像や証言、また本人のインタヴューで再構築してゆくオーソドックスなドキュメンタリー(イアン・ボノート&ピーター・エテッドギー共同監督)。映画の魅力=アレキサンダー・マックイーンの魅力ということになる。 やがて我々は、彼の一見くったくのない坊や然とした風貌の内に秘めた闇を知り、それが彼の創作活動の源であることを知る。1年に14ものコレクションを発表していたという情熱とエネルギー。気取ったパリの業界とは違ったロンドンの業界の熱気。断片ではあるが彼のショーの映像に感動を覚える。日頃ファッションとは縁遠い筆者は、この映画=アレキサンダー・マックイーンを通じてファッションというアートの存在意味を知ったように思う。 (吉)