カンヌ最高賞『万引き家族』、ついにフランスで劇場公開。

 カンヌ映画祭で頂点を極めた是枝裕和監督の『万引き家族』が、いよいよフランスで劇場公開だ。今村昌平監督の『うなぎ』以来、日本人監督としては、21年ぶりの最高賞パルムドール受賞作。日本では6月の公開からヒット街道をひた走り、国内350万人の動員を達成した。近隣のアジア諸国でも好成績をおさめ、ようやく冬に入り、作品お披露目の出発点・フランスでの公開と相成った。

 タイトルから想像できる通り、冒頭から風変わりな家族が登場する。父(リリー・フランキー)と息子の祥太(城桧吏)は、近所のスーパーで息の合った万引きの連携プレーを見せている。ふたりは銭湯の帰り道、ベランダで震える少女じゅり(佐々木みゆ)を見つけ、家に連れ帰った。雑然とした家には祖母(樹木希林)や母(安藤サクラ)、若い娘(松岡茉優)らが身を寄せ合って暮らす。父は日雇い労働者、母はパート勤め、老婆は未亡人、娘は風俗バイト。少年は学校に行く様子もなく、保護した少女は虐待で体中アザだらけ。人生ハードモードな彼らの境遇だけを聞くなら、さぞ暗くて重い日々を送る人たちだと思うかもしれない。

 だが、映画は彼らの等身大な日常を丁寧に積み重ねる。狭い部屋には柔らかな光が差し込むし、気心が知れた者同士の会話は、気ままな無遠慮感が妙におかしく、実に楽しそうだ。

 彼らはそれぞれに、深刻な秘密を抱えてもいる。そして、ある事件をきっかけに、秘密は白日に晒されてゆく。私たちが当たり前に信じ込まされてきた「家族神話」も、激しく揺さぶりをかけられる。

 今や日本の貧困率は6人に一人、児童虐待件数は平成28年度で約12万件にのぼるという。多くの人にとって身近な問題だが、貧困家庭や児童虐待は、まだまだ一面的なイメージで語られがちだろう。しかし、ドキュメンタリー作家として出発した是枝監督は、社会が見て見ぬ振りをする場所にあえて照明を当て、カメラを据え置いた。監督が登場人物へと注ぐ眼差しは紳士的で穏やかだが、その実、見せかけの豊かさに浸りきった現代社会への疑いの眼差しは、静かな怒りを内包しながら、物語の根底を冷静に貫いている。

 本作は笑いや涙のツボも押さえつつ、ラストにはほどよいカタルシスの要素も用意する。カンヌで最高賞を獲るほどに、「映画作家の作品」として世界に認められたわけだが、同時に、しっかりと大衆的な作品にもなり得ているのは驚きである。だからこそ、日本では大ヒットに繋がったのではないか。是枝監督は玉乗りの曲芸師ように、自分だけの作家性と大衆性の絶妙なバランスの一点を辿り当て、ついにその上に立つことに成功したようだ。ケイト・ブランシェットが「真似したい」と絶賛した安藤サクラの泣き顔や、監督の樹木希林愛が溢れる海辺のクローズアップなど、役者陣たちの佇まいも印象的で、忘れがたい。(瑞)

12月12日(水)公開。

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