『Le Misanthrope人間嫌い』

© Marcel Hartmann
© Marcel Hartmann
  世間知らずの純真な青年貴族アルセストを主人公に、虚偽と欺瞞に満ちた社交界を描く、モリエールの傑作の一つ(1666年初演)。自分に誠実であろうとするアルセストが恋をしてしまった相手は、皮肉にも、彼が嫌う社交界の悪風に染まった八方美人のセリメーヌ。セリメーヌに振り回された挙句、恋に破れたアルセストは、俗世間を憎みますます人間嫌いになっていく…。
 アルセストにとっては悲劇かもしれないけれど、アルセストを取り巻く人々の滑稽さといったらない。演出で出演もしているミッシェル・フォーによると、モリエール自身が演じたアルセスト役は奇抜で極端な人物として描かれたというが、18世紀に入ってからは戯曲をもっと真面目なものとして演ずる風潮となり、アルセストは高潔に、そしてセリメーヌは感傷的な人物として描かれるようになったという。フォーがこのたび目指したのは、モリエールがイメージしたアルセストでありセリメーヌに近い。この世の不幸をすべて背負ったようなアルセストの脇で、人物たちは機械仕掛けの人形のように、そしてアルセストの不幸などには目もくれず、大仰に言葉を発し動き回る。セリメーヌ(舞台出演は珍しいジュリー・ドパルデュー)は優雅で美しいが、どこか打算的でその冷静な態度は、決して感傷的とはいえない。 
 舞台は暗色と金色に覆われている。すべてが幻影であるかのような世界、我々が生きる世界は、策略に満ちている、ただこの世界すら存在しないかもしれないとでも言いたげな舞台…。これこそモリエールが言いたかったことなのではないか、と思う。(海)
3/25迄。火-土20h30、マチネ土17h、日16h。10€-44€。
Théâtre de l’œuvre : 55 rue Clichy 9e 
01.4453.8888
www.theatredeloeuvre.fr/