ユングの『赤の書』。 “Le Livre Rouge” de C.G.Jung

Mandala du Systema munditotius, C.G.Jung, 1916,  détrempe sur parchemin, collection particulière. © Fondation des oeuvres de C.G.Jung, reproduit  avec l’autorisation de la Fondation et du Dr Robert Hinshaw
Mandala du Systema munditotius, C.G.Jung, 1916, détrempe sur parchemin, collection particulière. © Fondation des oeuvres de C.G.Jung, reproduit avec l’autorisation de la Fondation et du Dr Robert Hinshaw
 2009年に英語版とドイツ語版が出た、カール・グスタフ・ユング(1875-1961)の『Liber Novus  赤の書』のフランス語版が、ユング没後50年の今年、出版された(日本語訳は昨年出版された)。それに合わせて、『赤の書』の原本を中心にした展覧会が、ギメ美術館で開催されている。9月末現在、パリで公開中の展覧会の中で、一番衝撃的な展覧会だ。
  『赤の書』は、スイスの精神医学者・心理学者ユングが1914年から1930年にかけて書いた文章と自作の絵で構成されている。生前はごく限られた人たちにしか見せたことがなかったという。ユングの死後、さまざまな要因があって封印されていたが、遺族の承諾のもと、出版の運びとなった。
 会場は、若い頃のユングの絵から始まる。その絵心と技術の確かさに驚かされる。ユングは実は美術愛好家だったことが知らされる。絵はしばらく中断していたが、『赤の書』で再開している。抽象も具象もある。自作を芸術作品とみなすことを避けていたというが、これを見れば、本人の気持ちは別として、立派な芸術である。文字はゴシック体のドイツ語で、中世の美しい挿絵本を見ているようだ。
 第一次大戦を予言するような白日夢を見たこと、誰もいないのに呼び鈴が鳴って、ドアを開けたらたくさんの霊が入ってきた逸話などから、ユングが霊能者だったことがわかる。交霊で絵を描いたスウェーデンの画家、ヒルマ・アフ・クリントを思わせる作品もある。けれども、それなりのロジックが明快に表現されたクリントの絵に比べ、ユングの絵にはドロドロしたわけのわからないものが感じられる。アール・ブリュットに近い。
 自分を実験台にして、心の深い海の底に入り込み、そこから出てきたものを描き、記した。アートセラピーの源流を見る思いである。
 会場では、『赤の書』の一部とそれにまつわる出来事、関連作品が紹介されている。最後はユングに影響を与えた仏教、インド神話、タオイズムの作品が出てくるが、こちらにたどり着くまでに、めくるめくユングの深層心理世界とその芸術力に圧倒され、力尽きてしまう。プロの芸術家でも、これほどの想像力を持ち、それを表現できた人がどれだけいるだろうか。(羽)

Musée Guimet

Adresse : 6 place d’Iéna, 75016 paris
11月7日迄。火休。

 

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