『サンツ・モフォケング展』 “Santu Mofokeng”

Katse Dam—Lesotho,1996 Courtesy Lunetta Bartz, MAKER,  Johannesburg © Santu Mofokeng
Katse Dam—Lesotho,1996 Courtesy Lunetta Bartz, MAKER, Johannesburg © Santu Mofokeng

 この夏ジュ・ド・ポームでは、前号で紹介したクロード・カーアンとともに、もうひとつ良い展覧会をやっている。
 南アフリカの写真家、サンツ・モフォケング(1956-)だ。アパルトヘイトで差別を受けてきた側の黒人の写真家で、反アパルトヘイトの闘いを写真で記録するために結成された写真家集団に1985年に加入している。その先入観で「さぞ重い写真だろう」と思って見ると拍子抜けする。
 モフォケングの展覧会では、写真から受ける印象と写真に付いている説明が一致していない。説明を読むと、作者の社会的な意識が強く感じられ、激しい写真を期待するが、目の前にある作品はまったく違う。オブラートがかかったような静けさがある。「新聞社のルポの写真は、撮ったら車ですぐに現像所に走って仕上げるという、締め切りとの闘いだが、自分にはできなかった。それで、じっくりと考えて撮るようになり、それが強みになった」と言う。ビデオで淡々と語る本人は、作品のイメージに近い。
 内向して熟慮した結果できた作品、特に風景写真には神秘的な雰囲気すら漂っている。
 キリスト教の一派の儀式で、頭から足まで白装束で身を固めた信者が、奇岩に造られた階段を登っていく。ファンタジー映画の一場面を見ているかのようだ。「仏教徒の静修(リトリート)」には、仏教徒の姿は見えず、一頭の白馬が写っているだけだ。馬の首から先は影になっていて見えず、体躯(たいく)の一部が暗い森から浮かび上がっている。馬が仏教徒の象徴なのだろうか。それとも、仏教徒は馬をつないだまま、こもりに入ったのだろうか。
 黒い鋼のような台地が半分水に沈んでいるレソトの「カツェ・ダム」。ねっとりと動かないダムの水と黒い崖が、この世のものではない美しさを醸し出している。実際は、緑の山に青々とした水をたたえたダムである。
 環境を汚染し続けるナミビアのウラン鉱山ですら、別の惑星ではないかと思えるような、魅惑的で不思議な光景だ。(羽)

9月25日迄。火休。


Jeu de Paume : コンコルド広場、チュイルリー公園内