カラックスのための リハビリ映画にも見えた。 “Tokyo!”

 オムニバスなんてうさん臭いと思っていた。『パリところどころ』、『パリ、ジュテーム』、『それぞれのシネマ』…。監督は才能を小出しにし、プロデューサーは企画先行の祭り気分に浮かれ足。そんな志の低さだから、「寄らば大樹の陰」的作品も紛れ込む。巨匠を集めた? 歴史的記念作? そんな名目も偽善的。だから自分は『Tokyo!』を見るのが怖かった。監督は、今を時めくミシェル・ゴンドリー&ポン・ジュノと、過去に時めいたレオス・カラックス。目をみはる人選だけに失望が怖い…とも思っていたのだが、これがなんと、予想に反して面白かったのだ。
 タイトル通り、すべて「東京」が舞台の中編が3作集まる。ゴンドリーの『インテリア・デザイン』は、上京したての女のコの実存問答で、異才の手にかかるとカフカ的不条理さえも微笑ましい世界に。続いてカラックスの『メルド』。「下水道の怪人」に扮するドニ・ラヴァンは、放送禁止ギリギリの存在感で東京を混乱に陥れる。そしてトリが、「引きこもり男」を描いたジュノの『Shaking Tokyo』で、これが一番の傑作。さてこのコラボーレーションだが、私にはトータルで「カラックスのためのリハビリ映画」にも見えた。なぜならゴンドリーは絶えず映画を通して「リラックス!」と繰り返すから、次に続く『メルド』が、カラックスには珍しくユーモアがにじんでいる。そしてジュノが描く「引きこもり」は、9年間映画を撮らずにいたカラックスの姿にも重なる。香川照之が久々に外気に触れ、太陽光線に顔を歪ませ前進する時、カラックスだって、やや力み過ぎながらも映画界の荒波を泳ぎ出せるのだから。先輩をサンドイッチにして優しくくるみ、挑発もする二人の後輩監督。オムニバス映画って、けっこういいものかもしれない。(瑞) フランスでは10月15日公開。


 

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