シラミさん、いらっしゃい。

 覚悟はしていた。「フランスに住む子供はシラミに一度はたかられる」と聞いていたから。でも日本に一時帰国する飛行機の中で、ミラの髪の毛に黒い虫と卵
らしきものを発見した時は、やはり相当ショックを受けた。これが噂のシラミファミリーか。よりによってこんな時に、と気分は沈む。友人らに大した土産も買
えないばかりが、かわりにシラミをプレゼントするかもと思うと情けない。早速東京に着くと同時に薬局に走り、シラミ退治シャンプーを購入した。これがかな
り高価。何日ごとに何ml使えだの指示もうるさい。元来、大雑把な私は使い方もテキトウ。そのせいかシラミの親玉はすぐに消えたものの、卵がなかなか絶滅
しない。結局ミラは髪に卵をつけたまま、フランスに戻ってきた。

 この国は、「シラミ先進国」の名に恥じず、シャンプーやスプレーなどの関連グッズが割安で種類も豊富だ。ミラは「スプレーをかける音が面白い」とか「シ
ラミ用クシで髪をとかしてもらうのが好き」とか言って、危機感はゼロ。それに週末など、ジルにミラを預けるとケアを忘れられることも多く、またふりだしに
戻る。ついにシラミ戦争も一カ月半を過ぎてしまった。今日も幼稚園から帰ってきたミラは、「仲良しのプリュンヌちゃんもシラミなの」と嬉しそうにしゃべり
出す。「それはよかったねえ」。もう正直、どうでもよくなってくる私である。(瑞)