入院生活が始まった。

 高熱から突然意識を失い、病院に運び込まれたミラ。検査の結果は尿路感染症という病気で、入院が必要だという。案内された個室の中央には、
高い柵付きのステンレス製幼児用ベッドがあった。どこか動物園の檻を連想させる。いつも私と添い寝しているミラは、このベッドではきっと寝られまい。看護
婦には、私と一緒に大人用のベッドで添い寝させてくれるようお願いしたが、フランスでは添い寝の習慣がないためか渋い顔をされる。しかしなんとか夜だけと
いうことで、お許しをもらえたのだった。

 ミラはその後も高熱が続き、何を飲んでも食べてもすぐに吐いてしまう。自慢の二重あごがあっという間にやせこけ、顔が縮んで見えた。私は心配のあまり
いっときも娘の側を離れられないから、お風呂にも入れない。日中は学校に通うジルは、朝と夕方に見舞いに来て、着替えと食料を運んでくれた。彼も、誰もい
ないアパートに帰り一人寝るのは、寂しかったという。

 4日目の昼、ミラの熱が微熱程度になったので、ようやく退院の許可がおりた。だが喜びも束の間、病院からは恐ろしき額の請求書が。非情な請求書を覗き込
み、ジルと一言、「やっぱりミュチュエル(相互共済保険)に入ろう」。ちなみに、恐れていた消防署の救助車の請求書は、ついに送られてこなかった。救急車
と違い無料なのだろう。(瑞)