にゅるっと滑り出た。

 ほぼ出産予定日となった朝、お腹のにぶい痛みで目が覚めた。これがいわゆる陣痛だろうか。お昼近くになり、規則的に痛みが来るので病院へ。
助産婦さんには、タクシーは出産直前の妊婦の乗車拒否をすることが多いから、救急車を使えとも言われていたが、救急車では大げさに思える。幸い日曜日でジ
ルも在宅だったので、一緒に地下鉄に乗り込んだ。増してきた痛みによろけつつも、午後1時過ぎにようやく到着。検査すると子宮口がかなり開いているという
ので、休む暇もなく分娩室へ。フランスでは無痛分娩が主流だが、私は麻酔専門医と相談し、出産時に辛かったらその時に決めて使うことにしていた。

 結局出産30分位前に、陣痛がきついので麻酔をお願いしてみた。やはり麻酔の効果は抜群で、急にジルと冗談を言い合う余裕ができた。昨日までバカンスに
出かけていたという担当医も無事に駆けつけてくれ、呼吸法をリードしてくれる。そして17時過ぎ、ジルの立ち会いのもと、にゅるっと滑り出るように娘みら
が誕生した。

 ジルがへその緒を切る役目だ。へその緒を切るということは肺呼吸を開始させることであり、人としてこの世に誕生させることに違いない。その意味で、二人
で娘を誕生させることができたのは嬉しかった。その後娘を私のお腹に乗せ、ジルと二人で眺めて過ごした。なんだか夢を見ているような不思議
な時間であった。(瑞)