二等身のわが子の影。

 妊娠がわかったらのんびり妊婦ライフに浸っているだけではいけない。まずは乳幼児手当を受けるため、妊娠証明書を健康保険金庫と家族手当金
庫に送る。また希望の産院があれば早めに予約をする。私の場合は友人おすすめの産院に連絡したが、4軒目でようやく予約ができた。なんでも人気の産院に
は、まだ妊娠前でも予約を入れなくてはいけないという。加えて出産後に託児所を考えているのなら、妊娠中に区役所に予約をしないといけない。パリの赤ちゃ
んは、誕生前から競争社会に巻き込まれてしまうのだ。

 さて妊娠中の楽しみは、胎児の成長具合がパソコンの白黒画像でわかるエコグラフィー(超音波断層装置)。これで初めて二頭身のわが子の影を見た時の気分
はちょっと忘れられない。人間というよりピーナッツ。自分の体内にいるのだから限りなく近い存在なのに、まだ顔すら知らない謎の人物…。この奇妙な気分に
味をしめ、毎月の検診でもらったエコー画像を自宅の壁に貼るのが趣味になった。ジルと一緒に、ピーナッツの影をよく眺めて過ごした。だが来客時には恥ずか
しいので慌てて外したりもした。
 そんな母親若葉マークの私をたしなめるかのように、5カ月ごろにはおなかの内側からノックを感じるように。胎動だ。天然温泉が体内でポコポコ沸いているような感覚に似ていた。(瑞)