ダゲレオタイプで撮った福島 ー『100の太陽』新井卓個展。

Miharu (No.2), 25 avril 2011. Takashi Arai@galerie Camera Obscura

 福島原発事故についてのルポルタージュ写真をたくさん見てきた後で、同じテーマをダゲレオタイプで撮った新井卓の写真を見ると、そのアプローチのしかたがとても新鮮に映る。

タイトルの「100の太陽 Cent Soleils」は、アメリカの地上核実験の写真100枚を集めた写真集「100の太陽 100 Suns」から来ている。新井は、これを2008年に見たとき、きのこ雲が妙にきれいに見えたと言う。フランス語のタイトルは、新井が好きなクリス・マルケルの映画「サン・ソレイユSans Soleil(太陽無くして)」(1983)の題名と発音が同じだ。さく裂する原爆や核実験の巨大な光と、太陽が消えたような原爆投下・核実験後の世界の両方を意味しているように思える。

新井は、福島原発事故後に、写真集で見た世界が現実のものになってから、核のことを調べ始め、福島、広島、太平洋で行われたアメリカの核実験で被爆した第五福竜丸などを撮ってきた。会場には、熱でうなだれたようなヒマワリの花、津波の後の傾いた船、幽玄で美しいが、どこか怖い福島県三春町の滝桜が写っている。

この世のものではないような風景だ。かといって死の世界でもない。生と死の中間にある。臨死状態では、過去の人生が走馬灯のように見えるという。新井の写真には、それを体験したような気持にさせるなにかがある。懐かしいが、手の届かないところにある風景だ。

「見に来た人の中には、急に自分の記憶のことを話し始める人がいます」と、展覧会のためにパリに来た新井は語った。呼び起こされた自分の記憶を通して、実際に起きた核実験や原発事故の風景が心の中に入ってくる。

ダゲレオタイプは手間がかかる。新井は、銀メッキした銅板を2時間かけて鏡のようになるまで磨くという。1日1枚しか撮れない。でき上がった写真は一点ものだ。オープニングの日に、かなりの作品が売約済になった。一点ものゆえ、売れたら、次にいつ見られるかわからない。見られるうちに見て、記憶の中にとどめたい。5月27日まで。(羽)

Eclipse annulaire (No.1), 7h42, Onahama, Fukushima, 21 mai 2012. Takashi Arai@galerie Camera Obscura

Onahama, 26 avril 2011. Takashi Arai@galerie Camera Obscura


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