左右二大政党制の終わり?

L'0BS(16-3-3/9)「2017年秘密計画:ロケット・マクロン」

L’0BS(16-3-3/9)「2017年秘密計画:ロケット・マクロン」

オランド内閣で最年少のエマニュエル・マクロン経済相は、若くて(38歳)ハンサムで、ロスチャイルド銀行幹部だっただけに、考えていることをバリバリ実行してしまう。聖なる休息の日、日曜の営業など、フランスでは考えられなかったのにシャンゼリゼのデパートも営業できる(ギャラリー・ラファイエットは組合が反対)などの条令を成立させてしまう。エマニュエル・マクロンは、オランド大統領にとって行動力旺盛な息子みたいな存在だ。世論の人気もヴァルス首相を抜いて左派政治家のなかで一位。

そのマクロン経済相が4月6日、〈前進!En marche!〉というスローガンで、「左でも右でもない」運動開始を宣言した。1週間で賛同者が4万人、ほとんどが学生や3、40台の若年幹部・事業家たちだ。閣僚がこういうことをしていいの? と同僚や市民が考えてしまう。ヴァルス首相は弟分のマクロン経済相に、次期大統領選1年年前にこういうことをされては心穏やかではない。4月30 日からニューカレドニアを訪問したヴァルス首相は「彼は歩く、私は飛ぶ」と皮肉の一言。しかしながら、2015年6月の世論調査(TNS Sofres調査)によれば、18〜25歳の41%、25〜34歳の48 %は「右でも左でもない」と意思表示していたから,「En marche!」運動は若い世代に焦点を置いていることがわかる。

国民は40 年来、左派か右派の与野党、二大政党制に慣れてきたのだが、国民戦線党(FN)のマリーヌ・ルペンが2011年に党首になり、父ジャン=マリ・ルペンが定着させた極右的イメージの角を丸くし、ここ数年、地方選でも常時平均30%の支持率を獲得し、三極政党関係に入っている。来年の大統領選決選はいよいよマリーヌ・ルペンと左派か右派候補の対決が予想されている。投票者は、左派が政権をとってもサルコジ前政権のように右派が政権をとっても、失業問題はすこしも解決されないことを知っており、左右どちらも同じと考え、怒りのはけ口をFNに向ける。
しかしそれは、2015 年以前に言えたことで、今は全国民が「テロリズムの脅威」に直面させられている。マリーヌ・ルペンのスローガンは父親時代から変わらず「左でもなく右でもなく、フランス人のため」であり、「移民排除」と「ムスリム人排斥」、つまりシリアやイラクからの難民受け入れにも反対だ。

第二次大戦後、ドゴール大統領は戦後の立て直しのために共産党議員をも閣僚にし、一致団結してフランスの再建に踏み出した。現在、国際化するテロリズムの前で、左か右かという選択では、国民の安全が保障されない時期にきている。ダニエル・コーン=ベンディッドはル・モンド紙(16-4-30)掲載の「党派対立時代の終焉」の中で、「ドイツの革新・保守連立内閣のように、”3色政権”によるしか極右勢力やテロリズムに対抗できないのではないか」と提言している。ジハード(聖戦)のためのテロリズムという嵐の前でカジをとり乗り切れる、政治家以上の大統領を必要としているよう。西洋文明に対抗する「イスラム国」テロリストと戦う戦争時にあるのだから。

銀行家から政治家になりつつあるエマニュエル・マクロンはまだ四十前。数十年に一人くらいしか出てこない稀な人物としてとらえてもいいのかもしれない。