広島を舞台にした、ペリオ監督初の長編フィクション。

 

『Lumières d’été  なつのひかり』

 在仏20年のアキヒロ(大木ひろと)は広島に一時帰国している。フランスのテレビ用に、原爆投下70周年に関するドキュメンタリー番組を撮影中なのだ。目の前に座る年配の女性は、14歳だった当時の被曝体験を語りだす。

 あれはまもなく戦争は終わると信じていた夏の朝。突然、空には閃光が走り、耳をつんざく音がした。やがて火の海は迫り、町を彷徨った。道には夥しい数の瀕死の人がいた。肉親とは別れ、その後は原爆の記憶を消し去るように生きてきた……。インタビューは終わり、アキヒロはひとり平和公園へと向かう。

 前作『Une Jeunesse Allemande』が、セザール賞の最優秀ドキュメンタリー作品にノミネートされた、ドキュメンタリーの分野で確かな足跡を残すフランス人ジャン=ガブリエル・ペリオ監督の初の長編フィクション。冒頭から女性の言葉を逃すまいと丁寧に見せる流れに、被爆者への深い敬意を感じさせる。主人公のアキヒロは「もっと広島を知りたい」と願うペリオ監督の分身だろうか。

 アキヒロは被爆者女性の言葉をゆっくりと咀嚼(そしゃく)する間もなく、スタッフから制作の進行を急かされる。そして逃げるように平和公園へと足を踏み入れるのだ。彼の前に現れるのは、ミチコ(立川茜)と名乗る浴衣姿の若い女性。他人に人懐っこく話しかけたかと思えば、広島の苦しみを思い出すように描写する。あるいは言葉をかみしめるように、見た目を信じてはいけないのだと訴える。監督という言わば  “伝える人” でもあるアキヒロに、何かを託すかのように。

 原爆投下という史実に基づき紡がれる物語は、やがてファンタジーにも足をかける。人生のたわいない一頁だと思って過ごした日が、振り返ると、「あれは自分の人生において決定的に重要な日だった」と、後から思い当たるような不思議な記憶にも似た作品。

 原爆投下から72年。この7月、国連は賛成多数で「核兵器禁止条約」を採択したばかり。ニューヨークの国連本部では日本人被爆者も演説し、条約批准の推進力になった。その一方、唯一の被爆国の日本や核保有国は交渉すら不参加。

解決は前途多難だが、核はますますタイムリーな人類の課題だろう。盆と終戦記念日が近いこの時期、フランスにいながら広島の被爆者の魂に寄り添える作品の公開を喜びたい。(瑞)