閣僚交代劇の舞台裏。

 オランド大統領は何事も鎮静に、秘密裏にことを行う元首。2月11日の一部改造のことをその前日にも朝にも誰が留任し誰が辞めさせられるのかも口外せず、内閣帆船の主な帆柱(国防、内務、経済、教育、エコロジー、保健、法相は3週間前トビラ法相辞任後ユルヴォアス新法相)は代えずに、社会党の昔からのカマラードで大統領の腹心、エロー前首相をナントから呼び寄せ、外相に任命。代わりに、COP21にも全力を投じたファビウス外相を憲法評議会議長にした。ところがエロー前首相とヴァルス首相は犬猿の仲。彼は「ノーマルな大統領」オランド大統領の下でボロが出ないように頑張ったのに、2年後に「青二才」の血気盛んなヴァルス新首相が「闘う内閣」として引き継いだから、去っていくエロー首相の胸にグサリ、今もこの言葉が忘れられない。元ドイツ語教師歴のある彼が外相の座を引き受けたのは、外相はマティニョン首相官邸に行くこともないからだそう。

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ル・モンド紙(16-2-16 ) :オドレー・アズレー新文化相。

一番話題になったのは、フランスの文化を守る文化相の交代だ。2014年に就任したフルール・ぺルラン文化相が10日、上院で「創作の自由」法案について答弁し、午後も続くはずだったが、秘書が彼女の耳元に、彼女は今日お払い箱になったので答弁の続きは、新任のオドレー・アズレー新文化相が受け持つと知らせた。まるで将軍に闘うのを止めさせられ、別の守備兵と交代しろと言われたのと同じだ。ペルラン文化相は冷静に記者会見で、「私は韓国のビドンヴィルからフランスに養女としてもらわれてきました。それからこうして大臣にまでなれるのがフランスの素晴らしさです」と一語一語はっきり言った。
しかし、ヴァルス首相が推してきたペルラン文化相が一昼夜にしてどうして辞めさせられたのか。2年前に文化相になった時、オランド大統領に「ジャック・ラング元文化相先輩に会いに行くように」と言われたが実行しなかった。パトリック・モディアノがノーベル文学賞をもらった時、彼女は彼の小説を1册も読んでなかった。小説家ミシェル・トゥルニエが亡くなった時、葬儀に参列しなかった、など大統領はすべて記録している。文化粗には知識の他に深い教養と人間性が不可欠ということだろう。
オドレー・アズレー新文化相(43歳)は「大統領の大臣」と言われるくらい、2014 年以来オランド付きの文化顧問を務めてきた。ブルジョア系の家系で家族が皆、凄い高度の経歴を持っている。オドレーの父親アンドレ氏は、彼女が19歳の時、モロッコのハサン国王付きの経済顧問を務め、母親カチア・ブラミは作家。彼女は視聴覚分野の第一人者として音楽・映画産業界で知らない人はいない。オランド大統領は来年の大統領選に向けての看板娘にしたいところ。彼女とマクロン経済相とも政治家肌ではなく民間出だ。

シャルリ・エブド(16-2-17):プラセ新閣外相「ノートルダム・デ・ランド(新空港建設反対地)のカエルを全部食っちゃった」

シャルリ・エブド(16-2-17):プラセ新閣外相「ノートルダム・デ・ランド(新空港建設反対地)のカエルを全部食っちゃった」

 しかしそれだけでは足りない。2014年に住宅相だったデュフロ欧州緑の党元党主がケンカ腰でオランド政権を飛び出したあと、大統領はどうにかしてエコロジー派を抱え込んで、大統領選に候補者を出させないようにしたい。そこで手品師が帽子から鳩を取り出すように、分裂中の緑の党からコス党首(国籍剥奪法案に反対したが)に白羽の矢を立て住宅相に任命、ピンピル党幹部はビオディヴェルシテ担当閣外相に、元気のいいプラセ上院議員は国政改革閣外相に、とデュフロ路線造反組3人を閣僚にしてしまった。彼らはエコロジーに理解のあるエロー前首相が外相になったから入閣を受け入れたよう。これで、オランド大統領は社会党と張り合うエコロジー派の勢力を削ぎ、来年春の大統領選挙に向けて揺ぎない陣営を組む。